2025.07.22
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「簡単で使いやすい」を高度な技術で実現する【前編】/ファナック 安部健一郎 常務執行役員

ロボット活用の裾野が広がる中で「ユーザーがより簡単に使えるロボットが求められている」とファナックのロボット研究開発統括本部長の安部健一郎常務執行役員は話す。これまで自動化されてこなかった作業を「簡単に自動化」するには、ユーザーが意識しない裏側では従来よりさらに高度な最先端の制御技術が必要になる。そのコンセプトを象徴する製品が協働ロボット「CRXシリーズ」で、「ロボット導入の敷居を下げ、心理的なハードルをなくしたい。これまでロボットに触れたことがない方々にも使ってもらえれば」と安部常務は語る。

人手に頼らない生産体制を

――まずは足元の市況について教えてください


 直近で需要は決して下がっているわけではないのですが、まだ活況とはいえません。米国の関税政策が最終的にどう落ち着くのか。これが分からないとユーザー企業が今の工場に設備投資すべきか否かを判断しにくいため、ひとまずは様子見という企業が増えています。これがなければ今ごろはもっと高い水準になっていただろうと思います。


――今はユーザーが投資に踏み切りにくいタイミングなのですね。


 はい。しかし、先行きについては決して「悪くない」と考えています。いつまでも様子見しているわけにはいきませんので、今後は投資が増えていくでしょう。引き合い自体は多く、自動化のニーズは依然として高いといえます。

盛況だったドイツ・automatica2025のファナックブース

 ――国別、地域別で見るといかがでしょう。


 どの国もどの産業も、自動化のニーズはとても高いです。国内では最近、「将来は数百万人分の働き手が不足する」といった話がありますが、人手不足は日本だけの問題ではありません。ファナックは世界中で自動車や電気機器、物流、食品、農業などのあらゆる産業に関わっていますが、どこでも「人が足りない」との声を耳にします。人が集まらない、あるいは集まったとしても人件費が高騰しており、自動化が必須となっています。ドイツなど欧州地域は日本と同様、設備投資のマインドが低下しており足元の勢いはありませんが、自動化への関心はとても高いです。中国も昔のような人海戦術には頼れない状況になってきました。

米国でも存在感を示すファナック(写真はIMTS2024)

 ――北米はいかがですか?


 北米も上昇基調ではあります。関税政策は必ずしもマイナスではなく、米国企業が今後米国内での生産比重を増やすことがあり得るでしょう。米国は人件費が高騰していますから、国内で人をたくさん雇うことは難しい。そうなればできる限り自動化することが求められます。人件費が高騰すれば、人件費換算での投資回収がしやすくなりますから、われわれ自動化業界にとっては追い風です。さらには給与を上げても人手の確保が難しい企業も出てきており、費用対効果も関係なく自動化投資をする企業も増えつつあります。


――なるほど。


 地域を問わず、「ロボットを活用して自動化を進めなければいけない」とのユーザーの危機感をひしひしと感じます。従来は製造コストを抑えるために「人件費の安い国に生産拠点を移す」との動きが活発でした。しかし今では人件費の安い国が少なくなり、また工場移転が増えればその国の人件費もすぐに上がります。競争力を維持するために「人手に頼らない体制」の構築を目指して自動化投資をする企業が増えています。

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