[ロボットが活躍する現場vol.52]AMRをフレキシブルに運用/IDECロジスティクスサービス
制御機器メーカーIDECのグループ会社であるIDECロジスティクスサービス(大阪市淀川区、三宅智之社長)は、自律走行型搬送ロボット(AMR)を活用して部品の搬送を自動化した。AMRにはIDECが開発した駆動部品やセンサーが使われており、動作制御の核となるのがパナソニックアドバンストテクノロジー(大阪府門真市、前田崇雅社長)の搬送ロボット向けソフトウエアパッケージ「@mobi(アトモビ)」だ。アトモビで動作制御をすることで、停止精度や位置の認識能力が向上し、使い勝手が向上したという。
ロボットが活躍できる環境を構築
IDECロジスティクスサービスは兵庫県たつの市に、IDEC製品の組み立て拠点としてアセンブルセンターを2019年に開設した。製造業全体を取り巻く人手不足の問題を受け、自動化設備の導入や効率的な運用ができるようセンター内のレイアウトを工夫した。例えばAMRが通行しやすくなるよう通路幅を広げるなど、ロボットが活躍できる環境を整えた。
組み立て前の部品を載せたかご台車を搬送する用途でAMRを活用する。1階の倉庫エリアからエレベーター前までAMRで搬送し、そこから作業員がエレベーターを使って2階の組み立てエリアに運ぶ。
AMRには車輪、モーターなどを組み合わせた駆動部品「Safety Wheel Drive(セーフティ・ホイール・ドライブ)」や、センサー「Safety Laser Scanner(セーフティ・レーザー・スキャナー)」などのIDEC製品を搭載。安全に人と協働できるように設計したオリジナルのAMRだ。低床設計のためかご台車の下に潜り込むことが可能で、AMRの天面が昇降してかご台車を持ち上げて搬送できる。
より正確な動作制御をするために搬送ロボット向けのソフトパッケージであるパナソニックアドバンストテクノロジーのアトモビを採用したのが大きな特徴だ。
走路設定をフレキシブルに
一般的な無人搬送車(AGV)は決まった経路を走行する磁気テープ誘導方式などが多い。そのようなAGVにアトモビを組み込むことで、レーザー測定技術を使って周囲の環境と自己位置を認識するSLAM(スラム)方式での制御が可能になり、自律移動可能なAMRとして使えるようになる。高精度な自己位置の推定が可能な点や、スマートフォン、パソコンなどから簡単に搬送路の設定ができる点が大きな長所だ。
元々、動作制御には他のソフトを使っていたが、停止位置の精度が十分でなかったことや、自己位置を見失いやすい点があり、安定した運用ができない問題があった。「アセンブルセンターの床は平滑なこともあり、AMRのタイヤが滑りやすい。そのため、AMRが実際にいる位置とソフトが認識した位置でギャップが生まれることが少なくなかった。このような問題を解決するためにアトモビの導入に至った」とIDECロジスティクスサービスの竜野事業所アセンブルセンターDX推進チームの堀晴彦リーダーは語る。
アトモビをAMRに組み込んだことで停止位置や自己位置を推測する精度が大きく向上し、位置のギャップが生まれにくくなった。
それに加えて、搬送路を自律生成するか、決められた走路に沿って進む従来のAGVのような動き方にするかを状況に応じて柔軟に設定できるようになった。「良かれと思って近道となる搬送路を自律生成しても、うまく通れない箇所があった。その際はAGVのように搬送路を固定した方が効率的に搬送できる。搬送路の自律生成とAGVのような決まったルートの走行を状況に応じて柔軟に選べるため、使い勝手に優れる」と語る。
他拠点にノウハウ共有目指す
今後はAMRの行動範囲の拡大を視野に入れる。「具体的な計画はまだこれからだが、組み立てエリアがある2階や3階でも工程間搬送用AMRの導入ができればと考えている。エレベーターを使って階層をまたいだ行き来をできればそれが理想的」と言う。
また、アセンブルセンターで培った自動化のノウハウをIDECの各拠点に生かすことも目標として掲げる。「今はじっくりとノウハウをためて、いずれ来る各拠点のリニューアルのタイミングで一気に自動化を進めたい」と力を込める。
(ロボットダイジェスト編集部 斉藤拓哉)