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2025.07.02
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[SIerを訪ねて vol.58]SI事業を通じて自社製品の強みを伝える/三共製作所

三共製作所(東京都北区、小川広海会長兼社長)は昨年、システムインテグレーション(SI)事業をメインとした部署を立ち上げ、システムインテグレーター(SIer、エスアイアー)として本格的に始動した。SIer事業を新たな柱として育てることに加え、自動化事例における同社製品の有用性を広く周知し、導入件数を増やすことも大きな目的として掲げる。

自社製品の長所を引き出す

 産業用ロボットの走行軸などに使われる搬送装置「LinerUnit(ライナーユニット)」や工作機械の円テーブル、位置決め装置などを設計、製造する三共製作所は、SI事業を専門とするエンジニアリング事業本部を昨年発足した。

エンジニアリング事業本部の拠点である大阪営業所

 SI事業における最大の強みは、自社製品の特徴をどのSIerよりも深く理解し、使いこなせることだ。「わが社の製品は精度の高さ、寿命の長さが大きな長所。しかし、正しく使わないとその良さが発揮されない」とエンジニアリング事業本部の平塚勝彦本部長。「メーカーであるわが社がインテグレーションをすることで、顧客に製品の性能を十分に発揮した状態で使ってもらえる。また、SI事業を通じて顧客から製品に対する意見を聞き、開発部門にフィードバックするのもエンジニアリング事業本部の役割の一つ」と語る。

時にはロボット抜きの自動化も

搬送装置「ライナーユニット」を使った自動化システムのイメージ

 SIerとしてのこれまでの実績は自動車分野をはじめとした製造業向けが非常に多い。導入してきた企業の規模はティア1(自動車メーカーと直接取引する一次サプライヤーの大企業)から社員数が10数人の企業まで幅広い。小規模な企業は生産技術部門が存在しないことが多いため、その場合は三共製作所が生産技術の役割も担う。

 製造業の中でも自動車産業における溶接作業の自動化案件が多数を占める。これは同社が溶接ポジショナーと呼ばれる溶接作業において加工対象物(ワーク)の姿勢維持をする装置を開発、製造していることに由来する。

 溶接の中でも特に自動車分野の場合に自動化の障壁となるのがワーク重量の大きさだ。同社製品の中でもライナーユニットや溶接ポジショナーは標準品で最大1000kgまで積載できるモデルを用意する。位置決め装置「RUシリーズ」では、1万5000kgまで積載可能なモデルがあり、重量物も難なく取り扱える。「重量物の扱い方を心得ているのは、他のSIerにはあまりない特徴ではないか」と平塚本部長は言う。

 自動化システムの導入事例の中には垂直多関節ロボットを使わないケースもある。例えば、工作機械のパレット(ワークを搭載する台)交換を自動化する際は、搬送機器であるライナーユニットを使った自動化システムを提案する。「ロボットを使うのでなく自動化することこそが目的。最短距離でいかに自動化を実現できるかを考え、ケース・バイ・ケースで顧客に提案する」と話す。

まずは知名度向上

「他のSIerにわが社の製品の強みを知ってもらうのもエンジニアリング事業本部の役割の一つ」とエンジニアリング事業本部の平塚勝彦本部長

 エンジニアリング事業本部の発足以前から製品の導入時にシステムインテグレーションを担うことはあった。しかし、営業社員や手が空いている技術担当者がその時々に応じて担当していたため、ノウハウが属人化していた。同事業本部の発足で自動化案件の増加だけでなく、ノウハウの社内共有も目指す。

 「導入事例を増やしたり、展示会への出展を通じてSI事業や製品の知名度を高めたい。導入事例を通じて他のSIerにもわが社の製品の強みを知ってもらい、さまざまな分野でわが社の製品を使ってもらうのが理想」と平塚本部長は語る。

 SIerとしての体制強化にも力を入れており、2024年にSIerの丹羽工機(岐阜県各務原市、丹羽誠社長)がグループ会社となった。自動化ソリューションを提案できる人材を増やし、対応できる案件数の増加を目指す。

(ロボットダイジェスト編集部 斉藤拓哉)

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