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2024.04.25

自動化とAIを融合、瓶の分別を自動化する選別機を共同開発/高松機械工業、PFU

自動車業界向けの生産ラインを得意とする工作機械メーカーの高松機械工業は、人工知能(AI)で瓶の分別を自動化する「AI・B-sort(ソート)」をスキャナーメーカーのPFU(石川県かほく市、村上清治社長)と共同開発し、4月10日に発売した。AI・Bソートは高松機械工業の自動化技術とPFUのAI技術を融合した資源ごみAI自動選別機で、人手作業に依存していた瓶の分別の自動化を実現する。両社は正式発売に先立ち、4月3日に石川県白山市にある高松機械工業のあさひ工場で共同会見を開いた。

99.8%の高い認識精度

高松機械工業とPFUが共同開発したAI・Bソート

 AI・Bソートは、瓶の色や「禁忌品」と呼ばれる異物をAIで認識して自動で分別する資源ごみAI自動選別機だ。高松機械工業とPFUが共同開発し、4月10日から販売を開始した。

 AI・Bソートは2台の3軸直交ロボットから成る「ロボユニット」と、PFUが開発した画像認識用AIエンジン「Raptor VISION BOTTLE(ラプター・ビジョン・ボトル)」で構成される。
 まずはベルトコンベヤー上を流れるさまざまな瓶をカメラで撮影し、その画像をラプター・ビジョン・ボトルで解析する。その画像データを基に、茶色や透明、その他の色、そして禁忌品をAIで認識し、対象の色の瓶をピッキングするようロボユニットに指令を出す仕組みだ。ラプター・ビジョン・ボトルには事前にさまざまな瓶の形状や色を学習させており、実証実験では99.8%の高い認識精度を実現したという。

  • AIで瓶の色や禁忌品を認識し、ロボユニットでピッキングする

  • 3つの吸着パッドで構成された独自のハンド

AI・Bソートが透明な瓶をピッキングする様子

 ロボユニットの開発には、高松機械工業がこれまで自動車業界向けの生産ラインの構築で培ってきたローダーの技術を応用した。ロボユニットには3つの吸着パッドで構成された独自のハンドを採用しており、瓶を安定してピッキングできるのが特徴だ。最大で毎分70本のピッキング能力を持つ。
 また、3軸直交ロボットには片持ち構造を採用したため、ロボユニットのコンパクト化も実現。既設のベルトコンベヤーにも後付けで導入しやすくした。
 AI・Bソートは現状、2台のロボユニットを活用した「2色選別仕様」と3台の「3色選別仕様」の2種類をラインアップする。茶色、透明、その他の色の中からどの色をどの直交3軸ロボットにピッキングさせるかも自由に設定でき、フレキシブルな運用が可能だ。

全国3000カ所以上の中間処理施設がターゲット

高松機械工業の高松宗一郎社長(=写真左)とPFUの宮内康範取締役執行役員常務(=同右)

 AI・Bソートの販売ターゲットは、全国に3000カ所以上ある資源ごみの中間処理施設。瓶をリサイクルするには色ごとに分ける必要があるが、従来は作業者が人手で瓶を分別していた。PFUの宮内康範取締役執行役員常務は「中間処理施設が抱える課題を受けてラプター・ビジョン・ボトルを開発したが、わが社にはロボットでAIをピッキングするノウハウがなかった」と振り返る。そこで、自動化技術に強みを持つ地元企業の高松機械工業とPFUの両社でタッグを組み、AI・Bソートの開発につなげた。

 AI・Bソートは既存設備に後付けで導入しやすいこともあり、製品価格も競合と比較して約40%低い(高松機械工業調べ)という。両社はこうしたコストメリットなどを武器にAI・Bソートの提案に注力し、中間処理施設での瓶の分別作業の自動化を推進する構えだ。高松機械工業の高松宗一郎社長は「AI・Bソートはわが社が力を入れている『持続可能な開発目標(SDGs)』の活動にもつながる上に、人手不足にあえぐリサイクル業界にも大いに貢献できる」と自信を見せる。今年度は4施設からの受注を目指す。

(ロボットダイジェスト編集部 桑崎厚史)

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