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2024.04.18

インタビュー

「4つの戦略」で差別化狙う/バイナス 下間篤社長

「より付加価値の高いソリューションをお客さまに提供し、競合他社との差別化を図るため、新たに4つの戦略を打ち立てた」――。そう語るのは、今年1月にシステムインテグレーター(SIer、エスアイアー)のバイナス(愛知県稲沢市)の新社長に就任した下間篤氏だ。同社が今後推進する「4つの戦略」とは一体何か? それぞれの戦略について下間氏に詳しく話を聞いた。

より付加価値の高いソリューションを

「新たに4つの戦略を打ち立てた」と語るバイナスの下間篤社長

――まずは足元の景況感からお願いします。
 わが社は民間企業向けの自動化システムの構築や、教育機関向けの実習装置の販売、そして技術者などを対象とした教育サービスの提供といった3本柱で事業を展開しています。新型コロナウイルス禍が猛威を振るった2021年度と22年度を振り返ると、民間企業向けのSIer事業や教育サービス事業は縮小傾向となりましたが、教育機関向けの事業は特需もあって大きく拡大し、事業全体では2年連続で増収増益となりました。しかし、これまで成長をけん引してきた教育機関向けの事業も23年度には一服感が見られました。SIer事業もコロナ禍からは回復しつつあるものの、自動車業界の電気自動車(EV)シフトの流れや、中国経済や半導体業界の低迷、不安定な為替動向など先行き不透明な状況が続いています。

――こうした市況下で社長に就任しましたが、これからの事業戦略をどう描いていますか。
 これまでと同じ事業を継続するだけでは安定的な成長が期待できません。より付加価値の高いソリューションをお客さまに提供し、競合他社との差別化を図るためにも、新たに4つの戦略を打ち立てました。今後は既存のビジネスに加えて4つの戦略も推進し、事業拡大につなげたいと考えています。

引き合いや納入実績は増加

協働ロボットの実証が可能な協働ロボットセレクションセンター(写真は21年8月に撮影)

――4つの戦略とは?
 まずはSIer事業の一環として、協働ロボットや自律走行型搬送ロボット(AMR)を活用した自動化システムの提案に注力します。また、「まだ自動化が進んでいない領域」の開拓にも努めます。教育機関向けの事業でも、新しい実習装置の開発や提案を加速させたいと考えています。最後に、18年から始めた教育サービス事業も強化したいです。

――それぞれ詳しく教えてください。最初に、協働ロボットやAMRの取り組みからお願いします。
 協働ロボットやAMRを使った自動化システムを実証するための拠点として、21年8月には「協働ロボットセレクションセンター」、9月には「AMRテストフィールドセンター」を本社の第二工場内にそれぞれ開設しました。「実際の生産現場に協働ロボットやAMRを導入したい」と考えるお客さまに対し、これらの拠点を生かして最適な機種の選定から自動化システムの実証までポートします。その成果もあって最近は幅広い業種の大手企業を中心に、協働ロボットやAMR関連の引き合いや納入実績が増加しています。協働ロボットの案件については、各種センサーや周辺機器を活用した高難度なアプリケーション(使い方)がメインです。協働ロボットとAMRを組み合わせた自動化システムの構築も多いですね。

バイナスが開発した遠隔操作ロボットシステム

――2つ目の「まだ自動化が進んでいない領域」とは具体的に何を指しますか。
 大きくは3つあります。1つ目は給食センター向けで、業務用調理機器内のカレーなどをかき混ぜる作業を自動化する遠隔操作ロボットシステムを開発しました。給食センターでは一度に大量の食事を作るため重労働の作業が多い上に、調理環境も決して良いとは言えません。遠隔操作ロボットシステムを導入すれば、こうした環境から作業者を解放できるでしょう。2つ目は航空機の機体組み立てです。これも人手作業がメインですから、増産をしようにも限界があります。お客さまの生産効率を高めるためにもロボットシステムの導入を推進したいです。3つ目はコンビニなどの倉庫での仕分け作業の自動化です。現状は倉庫内の作業者が店舗ごとに必要な数を仕分けしますが、想像するだけでも大変そうですよね。この領域にもロボットシステムを提案し、重労働の自動化を図りたいです。

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