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2023.12.28

ロボットエンジニア育成と裾野拡大にエンタメ視点/スクランブル

ロボットに関連するあらゆる業界で共通の課題とされるのがエンジニア不足だ。さまざまな企業や団体がなり手の拡大や育成強化に取り組むが、次世代ロボットエンジニア支援機構「スクランブル」(京都府精華町、川節拓実代表理事)は、広く受け入れられやすいスポーツやエンターテインメントの視点で「エンジニア選手権(CoRE、コア)」を開催する。コンピューターゲームなどの腕を競う「eスポーツ」の一種だが、エンジニア育成という目的に根差した競技ルール作りが、既存のロボットコンテストやeスポーツとは一線を画す。

有志の集まりが母体に

スクランブルがイメージするロボットエンジニアの裾野(提供)

 ロボットの導入数では中国が首位を走るが、日本は今なお世界屈指のロボット大国だ。国内外で活躍する優れたエンジニアが、日本のロボット業界を支えている。
 とはいえ、エンジニアたちも時間と共に世代交代を迫られる。もともと業界の発展に合わせてエンジニア不足が顕著になりつつあり、将来のエンジニアをどのように増やし育てるかは、業界全体の大きな課題だ。

 スクランブルの川節拓実代表理事は、「国内外で活躍する少数のトップエンジニアを頂点に、そこを目指す多くの第一線級のエンジニアが存在する。そしてその卵は学生やエンジニアリングに興味を持つ社会人だ。将来のエンジニアのなり手を確保するには、子どもや学生といった若者にロボットに興味を持ってもらい、実際に触れられる機会が必要だ」と話す。
 スクランブルは産学の有志の集まりが母体で、メンバーのほとんどが別に本業を持つ。川節代表理事自身も大阪大学基礎工学研究科の助教が本業だ。「平日の夜や休日など、本業の合間を縫って、オンラインで打ち合わせをすることも多い」と話す。

業界外を巻き込むには

コアで使うロボットキットの一例(提供)

 子どもや学生、非エンジニアの社会人の興味を引くのは簡単ではないが、ゲームやエンタメといったコンテンツの中で体験してもらうのは効果的な手法の一つだ。

 コアはスクランブルが企画したeスポーツで、フィールド上を走行するロボットが発泡スチロールのフライングディスクを撃ち合い、より多く相手に命中させることを競う。ロボットは競技規則の範囲内で自由に製作することができ、初心者の参加ハードルを下げるためのロボットキットも用意されている。命中の判定には、ロボットの前後左右に1枚ずつ装着した4枚のプレートを使う。ディスクがプレートに当たるとプレートの後ろにあるスイッチを押し、ダメージとして認識する。

 コアの面白さは、ロボットを操縦して戦うスポーツ性だけではない。負けたチームは勝ったチームの傘下に入り同盟を組んで次の試合を共に戦うというルールもその一つ。勝敗よりも経験を重視することでノウハウを蓄積できる。従って決勝戦は、勝ち残った2つのチームを総大将として、全てのチームが2つの同盟に分かれて戦う。成績を問わず最後まで経験できるという訳だ。チーム間には連帯感も生まれ、参加者も観戦者も熱くなることができるなど、eスポーツとしてうまく考えられている。

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