生産現場のロボット化と自動化を支援するウェブマガジン

2023.12.18

[ロボットが活躍する現場vol.31]ロボット導入で社会課題の解決へ大きな一歩/南山城学園

障がいのある人を支援する施設を運営する南山城学園(京都府城陽市、磯彰格理事長)は昨年9月、就労支援施設「魁(さきがけ)」に、双腕ロボットを使った基板のはんだ付けの自動化システムを導入した。「ロボットを使えば品質の安定化が図れる。質の高い製品をそれに見合う金額で販売することで、就労支援施設の労働者の賃金向上につなげたい」と赤塚信隆施設長は語る。

危険作業をロボットで安全に

就労支援施設「魁」で製造するセンサー用の基板。中央の大きな白い部品がマイコンボード(提供)

 南山城学園は京都府城陽市や大阪府で、障がいのある人や高齢者に向けた支援施設や医療施設などの社会福祉施設を運営する。20カ所以上ある施設の中で、就労継続支援B型の該当者の就労を支援するのが魁だ。
 就労継続支援B型とは、通常の事業所に雇用されるのが困難であり、雇用契約に基づく就労が困難な人に対し、就労や生産活動の機会などを提供する事業所やサービスのことを指す。
 赤塚施設長は「障がいのある人が働きながら自立して暮らせることを目標に、基本的な就労と生活のスキルを身に付けられるようサポートをする」と語る。

 これまでは、ランドリーサービスや箱の制作、広告の折り込みが主な作業内容だったが、今年から新たにセンサー用の基板を作ることになった。40mmほどの小さな基板に13点の細かい部品をはんだ付けする作業を、川崎重工業の双腕ロボット「duAro(デュアロ)」を中心とした自動化システムに任せる。

 はんだ付けの作業で使うはんだごては、作業中に高温となるためやけどの危険性がある。はんだ付けの作業を自動化することで、安全に作業が進められるようになる。また、システム内に人の手などが入ると安全装置が作動して稼働が中断するため、稼働中の事故のリスクが減らせる。

川崎重工業の双腕ロボット「デュアロ」を使ったはんだ付けの自動化システム

 はんだ付けの自動化システムはベルトコンベヤーとデュアロ、2台のカメラ、基板をセットしたジグ(作業補助具)を裏返す専用機と安全装置で構成される。2回に分けて、基盤の表面と裏面にはんだ付けをする。表面にはマイコンボードと呼ばれる部品のはんだ付けをし、裏面にそれ以外の部品のはんだ付けをする。

 作業の流れとして、まずは作業者が基板にマイコンボードを取り付け、その基板をジグにセットし、ベルトコンベヤーに置いて流す。上面に付けられた2台のカメラが、マイコンボードが決められた場所に取り付けられているか、しっかり基板にはまっているかを確認する。
 その後、デュアロが双腕の先端に装着したはんだごてでマイコンボードのはんだ付けをする。次にマイコンボード以外の部品を取り付けるため、ベルトコンベヤーを逆走させてスタート位置に戻す。

 作業者が残りの部品を取り付けた後、再びベルトコンベヤーで流す。マイコンボードと同様にカメラで部品の取り付け位置などを確認後、専用機でジグを裏返してはんだ付けをする。「一般的な産業用ロボットアームを2本使うと設備が大きくなり、作業者が働くスペースで一緒に仕事できない。安全性も考えて双腕型の協働ロボットを導入した。部品のはんだ付けが可能な位置にわずかながら個体差が生じる。それをカメラで認識し、その位置に合わせてはんだ付けを自動化するのが難しかった」と赤塚施設長は振り返る。

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