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2023.07.04

連載

[ロボットが活躍する現場vol.28] いずれ来る人手不足に備えて/オースズ

オースズ(横浜市港北区)はトルクヒンジなどの機構部品を製造する。従来は機構部品の組み立て工程の大部分が手作業だったが、2018年に自動化ラインを完成させた。組み立てからグリスの塗布、カシメ、部品の可動部のトルク測定までの一連の作業を自動化した。その自動化ラインはオースズの内製というのが驚きだ。鈴木瑞貴社長は「人手不足に備えて作業の自動化に取り組んだ。限られたリソースで生産性を高めたい」と語る。

将来に備えて自動化を

オースズは横浜市港北区に本社を構え、区の工場見学事業などに協力する

 オースズはトルクヒンジなどの機構部品を製造する。設計から請け負える体制で、プレス加工機で部品を作る。めっき加工や塗装など一部の作業を外注し、その後また自社で組み立てる。
 1971年の創業で、初めは受託加工が主だった。より付加価値の高い製品を作るために、複雑な機構部品の設計から製造、組み立てまでできる体制にした。医療機器のモニター向けに作る際などは、トルクヒンジのサイズや重さ、必要なトルク値、動く角度などを顧客からヒアリングして製造する。今は機構部品の受注が最も多く、分野は建設や製造、医療、食品など。従業員数はパートタイマーを含めて45人。
 工場の1階には20台以上のプレス加工機が並ぶ。立形マシニングセンタも1台あり、多品種少量の部品も作れる。また社内で使うジグ(加工補助具)を内製する。
 2階には部品の組み立てラインがある。組み立てやグリスの塗布、カシメ、可動部のトルク測定など多くの工程を手作業でする。この組み立てラインを自動化するシステムを2018年に開発した。
 鈴木社長は「今はそこまで人手不足に困っていないが、遠くないうちに課題になるのは明らか。人でなくてはならない作業とそうでない作業を整理し、自動化していく必要があると考えた」と語る。

自動化システムを内製

組み立て工程を自動化し、5人分の作業を1人でできるようになった

 自動化システムはスカラロボット2台と垂直多関節ロボット1台に、自動カシメ機と自動トルク測定機を組み合わせて作った。人手作業は部品の供給のみ、自動で次々と部品が組み上がる。
 まずスカラロボットが部品を所定の位置にセットして、別の部品と組み合わせる。グリスを塗り、また別の部品と組み合わせる。それが終わると垂直多関節ロボットが部品をカシメ機に運ぶ。カシメ後の部品を垂直多関節ロボットがトルク測定機に供給し、トルクの数値を測る。
 従来5人で作業していたラインを自動化し、1人で同等の作業ができるようになった。このシステムはなんとオースズの内製だ。同社の社員がシステムの設計からロボットの選定、動作のプログラミングまでをした。初めは外注も考えたが、費用面から自社で作ることに決めた。鈴木社長は「費用対効果を重視してシステムを設計した。トルクヒンジの自動組み立てシステムを持つ会社は他にない」と自信をみせる。
 自動化システムができて生産性が上がったほかに、思わぬ効果もあった。鈴木社長は「自動化システムを見た顧客からの反応が良い」と言う。生産性の高さを目にした顧客の「これならロットを増やせる」「もっと精密な製品も」などの声があったという。

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