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2022.02.24

[特集 国際ロボット展vol.4] 業界全体の底上げを/FA・ロボットシステムインテグレータ協会 柳原一清 人材育成分科会主査(ヤナギハラメカックス社長)

前回展から国際ロボット展(iREX)に「ロボットSIerゾーン」が設置されるなど、近年システムインテグレーター(SIer、エスアイアー)への注目が高まっている。ロボットの需要が拡大する一方、ロボットシステムの構築を担うSIer側の人手が足りない。人材の採用と育成は喫緊の課題で、業界団体のFA・ロボットシステムインテグレータ協会(SIer協会)はさまざまな施策を打つ。SIer協会で人材育成分科会主査を務める柳原一清ヤナギハラメカックス社長は「人材を育てて業界全体を底上げするには、まずは人材を採用する必要がある。それにはSIerの認知度を高めなければ」と強調する。

需要に対し人足りず

「SIer業界でも人手不足が大きな課題」と指摘するSIer協会の柳原一清人材育成分科会主査

 自動化の需要はここ数年で急速に拡大しましたが、ロボットシステムを構築するSIerの人手が全く足りていません。SIer業界でも人手不足が大きな課題となっています。

 日本政府が2016年に策定した「日本再興戦略2016」では、ロボットのティーチング(教示)作業やシステム構築の支援ができる人材、つまりシステムインテグレーション(SI)人材を約1万5000人から5年間で3万人に倍増する目標を掲げました。経済産業省の調査によると、SI人材は18年8月時点で約2万6000人まで増加しました。そこから3年半がたち、SI人材もさらに増えたはずですが、需要に対して人手がまだ足りていないのが現状です。

 SIer業界で人手不足が喫緊の課題として認識されるようになったのは、比較的最近の話です。ロボットは従来、物の搬送やスポット溶接などがメインの用途でしたが、ビジョンセンサーなどの周辺機器やデジタル技術が進歩したことで、ロボットのアプリケーション(使い方)の幅がここ数年で一気に広がりました。市場が拡大し、ロボットへの注目度も高まりました。もちろん以前から人手不足感はありましたが、ロボットの需要拡大を受けて今では喫緊の課題になりました。

一人前には10年

大学生向けの特別講座(SIer協会提供)

 SIer協会の会員企業の多くは、従業員数が100人以下の中小企業です。中小企業は大企 業と比べて採用活動に苦戦するケースが多く、SIer業界も例外ではありません。
 
 また、ロボットシステムの構築は専門性が高く、現場でのすり合わせなどにノウハウや技術が求められますから、飲食チェーン店の接客対応のように簡単にはマニュアル化ができません。新人を採用しても、すぐに戦力になるわけではないのです。一概には言えませんが、わが社では一人前のS I人材になるのに最低でも1 0年かかります。  

 先ほどロボットのアプリケーションの幅が広がったと話しましたが、裏を返せば、SI人材にはより高度な要望にも応えられるだけの知識が必要になります。そのため、SI人材を3万人に増やすには人材の採用だけではなく、育成も同時並行で取り組まなければなりません。私が主査を務めるSIer協会の人材育成分科会では、業界全体の底上げを目指してSI人材の育成プログラムの策定などに注力しています。

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