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2021.05.19

連載

[活躍するロボジョvol.6]ダイナミックな動きに魅せられて/村田機械 山田文恵さん

ロボット・自動化業界で活躍する女性にスポットを当てた連載「活躍するロボジョ」。6回目は、村田機械(京都市伏見区、村田大介社長)で、自動倉庫システムなどの物流機器の機械設計を担当する山田文恵さんを紹介する。ダイナミックに動く物流機器に魅せられて同社に入社し、「物流機器の構造や形状を自分で一から考えて設計するのが面白い」と語る。開発から納入までにスピード感が求められる物流業界で、「設計した試作機のテストを着実に実施して、不安要素を確実になくすこと」を心掛ける。

地道に確実に

 山田さんは村田機械に入社してから今まで、スタッカークレーン(自動倉庫に荷物を入出庫するクレーン)や、水平方向に移動しながら荷物を搬送するシャトル台車と昇降装置を組み合わせた自動倉庫システム「Uni-SHUTTLE(ユニシャトル)シリーズ」など、製造業や物流センター向けの物流機器の設計を担当してきた。

 物流会社は新しい物流機器を次々と導入して競争力を高めており、同社のような物流機器メーカーには短納期対応が強く求められる。そのため、山田さんは「物流業界のスピード感についていくこと」を意識して業務に取り組む。案件の規模によっても異なるが、詳細な仕様決めから、現場に納入して調整を終えるまでの期間は1年半ほどという。

「生活に欠かせない物流業界の裏側で、自分が設計を担当した物流機器が動いていると思うと嬉しい」と話す山田文恵さん

 納入する製品は、まだ世に出ていない新機種が多い。事前に試作機でテストを何度も繰り返して動作確認をするが、実際に現場に納入する製品は、試作機よりもさらに大きく、台数も多い。それだけに「製品が不具合なく稼働するのを見届けるまでは、正直不安が大きいです」と山田さんは言う。

 日々の業務では「試作機のテスト段階で、不安要素を地道に取り除き確実になくすこと」を大事にし、不安を乗り越えて物流現場に新たな製品を届けている。

 新型コロナウイルス禍で通販の需要が急速に拡大したが、その物流現場を支えるのが物流機器だ。「私たちの生活に欠かせない物流業界の裏側で、自分が設計を担当した製品が動いていると思うととても嬉しいです」と胸を張る。

形が決まっていないから面白い

機械設計を担当した村田機械の自動倉庫システム「Uni-SHUTTLE(ユニシャトル)シリーズ」

 山田さんは、子供の頃から科学実験のテレビ番組などが好きだった。大学では機械工学を学び、設計業務の仕事に就きたいと考えた。

 偶然、就職活動で村田機械を見学した時、ダイナミックな動きをするさまざまな物流機器が目に留まった。「物流機器は同じような構造や形状に見えますが、細かく見ると一つ一つが違っており、決まった形はありません。さまざまな構造や形状の物流機器が自由に、そしてダイナミックに動くのが面白かった」と振り返る。

 入社してすぐに携わったユニシャトルシリーズは、荷物を搬送するシャトル台車が横に移動し、昇降機がシャトル台車を上下に搬送するものだが、同社がユニシャトルシリーズを開発するまではこうした構造のシステムはなかった。「荷物をつかむための爪の設計や、最適なリニアガイドやモーターの選定を一から考える必要がありました。自分で考え、物流機器の構造や形状を設計するのが面白いです」と話す。

 現在は後輩がいて、新入社員の指導も担当する。「新入社員や後輩が一人で設計できるように育て、チーム全体で設計のレベルを上げたいです」と意気込む。

愛知県犬山市の犬山事業所の開発部で設計業務を担当する山田さん

 今後の目標は、最初の設計段階から製品の完成度を高めること。その次の目標は「お客さまの競争力の強化につながる製品を自発的に設計開発できるよう、先を見る目を持つことです」と言う。

 休日は、飛行機や海の見える場所へ家族とドライブしてリフレッシュする。
 今はコロナ禍で難しいが、新幹線や飛行機などに乗るのも好きだ。「飛行機では翼の後ろに席を取り、フラップが動いているのを見るのが好きです。生粋の理系なんでしょうね」と山田さんは笑う。

(ロボットダイジェスト編集部 鷲見咲美)

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