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2021.03.22

宇宙開発で培ったトルク制御技術を日本へ/センソドライブ

ドイツのバイエルン州に本社を置くベンチャー企業のSENSODRIVE(センソドライブ)。ドイツ航空宇宙センター(DLR)からスピンオフ(独立)した同社は、宇宙空間で使う軽量ロボットの開発で培った技術をベースに、軽量でコンパクトなトルク制御機能付きの駆動装置「SENSO-Joint(センソ・ジョイント)」などを製造する。昨年末には日本市場に本格的に進出すると発表した。その狙いとは? ノルベルト・スポラー最高経営責任者(CEO)にウェブインタビューした。

トルクセンサーに強み

DLRが開発した軽量ロボット(DLR提供)

――まずは会社概要をお願いします。
 わが社は2003年にDLRからスピンオフしたベンチャー企業で、産業用ロボットや医療用ロボット業界向けにトルクセンサーや独自のトルク制御機能付きの駆動装置「SENSO-Joint(センソ・ジョイント)」を開発、製造しています。また、自動車業界向けに、専用のドライブシミュレーターの開発も手掛けています。ドイツのミュンヘン近郊のベスリングという小さな町に本社を構え、従業員は約50人です。

――設立の背景は?
 私はDLRで、宇宙飛行士と安全に協働し、遠隔操作しながら触覚フィードバックを得られる7軸の軽量ロボットを開発していました。ロケットに物資を搭載するには膨大な費用がかかるため、ロボットやその部品には小型化と軽量化が求められました。しかし、軽量化すると振動が発生しやすくなります。そこで、振動を抑えるのにトルク制御技術を開発しましたが、この技術は産業用ロボットや医療用ロボットなどの他分野にも応用できることに気付きました。そのため、DLRでのミッションだった「航空・宇宙開発の研究調査」とは別に、「市場に技術を提供する」ための専門の機関を作ろうと考え、センソドライブを設立しました。

主力製品のトルク制御駆動装置「SENSO-Joint」

――コア技術を教えてください。
 独自開発したトルクセンサーです。ディスク型のコンパクトな設計で、大きなスペースを取らずに、ロボットの関節に完全に統合できるのが強みです。多機能でもあり、高精度なトルク測定ができるだけではなく、減速機との接続や軸受けを押さえるシートとしての役割も持っています。

SENSO-Jointの分解図。独自のトルクセンサーやモーター、エンコーダー、減速機などで構成される

――センソ・ジョイントとは?
 わが社の主力商品で、自社開発のトルクセンサーやモーター、エンコーダー(角度を検出するセンサー)、ハーモニック・ドライブ製の減速機などを組み合わせたトルク制御駆動装置です。人と一緒に作業できる協働ロボットや、医療用ロボットの関節に組み込んで使います。トルクセンサーで測定したトルクを基に、ダンピング(防振)制御をかけます。これにより振動を減衰し、高精度な位置決めを実現します。またロボットの「触覚」を敏感にし、協働する人との事故を防ぐ効果もあります。センソ・ジョイントは搭載するロボットの種類に合わせて3つのサイズをシリーズ化しており、減速比や最大トルクに応じてシリーズごとに複数の商品を用意しています。ドイツのロボットメーカーのKUKA(クカ)や光学機器メーカーのカールツァイス、自動車メーカーのBMWなどで採用されています。また、ただ単に製品を提供するだけではなく、顧客のニーズに合わせたカスタマイズにも対応します。ハードウエアとソフトウエアの両面からソリューションを提案し、顧客の問題を一緒に解決できるパートナーでありたいと考えています。

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