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2021.01.07

AI活用の協働ロボットシステムで市場参入/京セラ

大手電子部品・電子機器メーカーの京セラが、「AI(人工知能)協働ロボット・システム」を開発し、ロボット市場に参入する。物体認識、経路生成、把持の3つのアルゴリズムを活用し、協働ロボット導入の障害と言われるティーチング(ロボットに動作を教える作業)の手間を最小限にする。例えば、「どこからどこへ移動させる」といったような作業内容を示すだけでロボットシステムが自動的に物体を認識し、経路を生成し、把持して移動させる。オープンな規格を採用し、ロボットメーカーや周辺機器メーカー、システムインテグレーター(SIer、エスアイアー)などに広く協調を呼びかける。

AIで協働ロボット導入を容易に

「AI協働ロボット・システム」の特徴

 京セラは2020年10月13日、「AI協働ロボット・システム」の開発と、21年のロボット市場への参入を発表した。
 ロボット事業のプロジェクトチームをまとめる経営推進本部ロボティクス事業開発部の森田隆三事業部長 は「協働ロボットの導入がなかなか進まないのは、品種ごとにティーチングが必要で、多品種少量生産に対応するのが難しいのが大きな理由。それをクリアできれば、協働ロボットの市場は拡大する」と語る。

 AI協働ロボット・システムは、クラウドとエッジ(デバイス側の制御装置。この場合は協働ロボットのコントローラー)で構成され、主に物体認識と経路生成、把持の3つのアルゴリズム(問題解決の手順)を有する。ロボット本体やコントローラーは販売せず、京セラはクラウド・エッジ向けのソフトウエアシステムを提供する。分析や学習といった負荷の大きい処理はクラウドで行い、負荷は小さいがリアルタイム性が求められる経路生成などの処理はエッジでするように役割分担させた。
 
 あらかじめクラウドに用意されたさまざまなAIモデルを活用することで、品種ごとにティーチングしなくても作業ができる。また、障害物を検知し自律的に回避する経路を生成したり、照明の条件が変わっても安定して物体認識できるロバスト性(耐環境性)も、AI協働ロボット・システムの特徴だ。

オープンアーキテクチャーを採用

オンライン取材で「ロス2を使ってオープンな開発環境を作りたい」と話す京セラの森田隆三事業部長

 AI協働ロボット・システムには、オープンアーキテクチャー(内部の仕様を原則公開とする設計手法)の「ROS(ロス)2 」を採用した。
 「オープンアーキテクチャーのプログラムを使うことで、ロボットと周辺機器が連携しやすくなり、ユーザーの利便性も高まる。多くのメーカーに賛同し対応していただくことで、ロボットシステム全体の価値を高めたい」と森田事業部長は意気込みを語る。

 システムと組み合わせるロボット本体や周辺機器も、ロス2に標準対応する機種を想定する。昨年10月にAI協働ロボット・システムを披露したオンライン展示会「CEATEC(シーテック)2020 ONLINE(オンライン)」では、ロス2を採用する協働ロボットに実装して参考出展。最小限の指示で動作する様子を紹介し、多くの閲覧者を集めた。
 森田事業部長は「わが社はロス2の普及を後押ししていく。業界全体としても対応が進む流れだが、ロボットメーカー各社が対応するには、既存のシステムとの互換性の問題があるためもう少し時間がかかるだろう」と話す。

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