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2019.11.15

インタビュー

溶接ロボットに軸足を置き、周辺領域を開拓【前編】/ダイヘン金子健太郎常務執行役員

電柱上の変圧器のメーカーとして1919年に設立され、電気関係の技術を生かして自動溶接機を開発。そして汎用性の高い自動溶接の手段としてロボットを開発した。近年では溶接ロボットに軸足を置きながら、ハンドリングロボットにも守備範囲を広げている。ダイヘンでFAロボット事業部長を務める金子健太郎常務執行役員は「お客さまのニーズを元にロボットを開発し、周辺機器を含めソリューションとして提案したい」と語る。

変圧器から溶接機、ロボットへ

アーク溶接ロボットの主力機種「FD-B6」

――貴社の事業について教えてください。

 ダイヘンは1919年に柱上変圧器メーカーとして設立されました。変圧器を含む電力機器事業は今でも総売り上げの48%を占める主力事業です。それに次ぐのが溶接メカトロ事業。垂直多関節ロボットや溶接トーチなどの溶接機器を扱っており、総売り上げの33%です。最後の一つは、プラズマ発生用電源装置やウエハー搬送ロボットを扱う半導体関連機器事業で、総売り上げの19%です。これらの事業は電気をコントロールするという点で共通しています。

――ロボット事業はどのような経緯で確立されたのでしょうか。

 戦後から60年代にかけて、造船や自動車向けに溶接機を製造、販売していましたが、70年代に自動化のニーズが高まり、初めは自動溶接機、後に溶接トーチを搭載した垂直多関節ロボットを自社開発しました。アーク溶接ロボットの販売を開始したのは80年です。これがわが社のロボット事業の生い立ちです。

――貴社のロボット事業の強みとは。

 ロボットシステムを構築するには、ロボットメーカーや周辺機器メーカーが機器を供給し、システムインテグレーター(SIer、エスアイアー)が組み上げるのが一般的です。それに対し、溶接分野においてはワンストップでロボットシステムを提供できるのがわれわれの強みです。

搬送ロボットにも注力

――今は搬送ロボットもラインアップしています。

 搬送用を含むわが社の産業用ロボットは、元は溶接用に開発されたロボットで、トーチを別のツールに交換することで汎用性を持たせています。7軸ロボットを開発したのも、溶接工程で使うためです。

――7軸ロボットは溶接でもメリットが大きい。

 もちろんです。溶接でも6軸ロボットがスタンダードなのは変わりませんが、7軸ロボットは溶接セルの省スペース化やシステムの簡素化に役立ちます。懐が深いので溶接の対象物をロボットに近付けることもでき、ロボット同士の接触(干渉)を避けやすいので密集して設置できます。また、ロボットそのものを移動させるスライド軸や、トーチが届かない場合に溶接対象物の姿勢を変える補助器具(ジグ)などの周辺機器を削減し、トータルコストやスペースを抑えることができます。最適なトーチ姿勢で溶接できるので、品質向上にも貢献します。

――貴社のロボットの特徴は。

 先ほどお話しした通り、元は溶接ロボットとして開発しているので、最終的に溶接ロボットとして使いやすいことが大切です。7軸ロボットで言えば、腰関節に当たる7軸目を中空構造にし、そこに電源ケーブルを通しているので干渉しにくい。 ねじれや曲げに強いケーブルを使っており、お客さまの工場の安定稼働に貢献します。アーク溶接ロボットの世界シェアでトップを獲得できたのも、お客さまのニーズやアウトプットを意識した開発姿勢を評価いただいたと考えています。

  • さまざまなアプリケーションに対応する7軸ロボット「FD-V6LS」

  • 7軸ロボット4台を協調動作させた溶接システム

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