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2019.08.09

コア技術生かしてロボット分野を開拓。電動グリッパーも新発売/オリエンタルモーター

モーターメーカーのオリエンタルモーター(東京都台東区、川人英二社長)は現在、ロボットの分野の開拓に力を入れている。そのコア技術になるのが、2013年に発売したモーター「ハイブリッド制御システム αSTEP(アルファステップ) AZシリーズ」だ。展示会や全国各地で開催する「オリエンタルモーターフェア」では、AZシリーズを使った自作ロボットを提案し、来場者に積極的にPRする。19年7月には、AZシリーズを使った電動グリッパー「EHシリーズ」も発売した。

アクチュエーターやファンも手掛ける

オリエンタルモーターが製造販売する小型モーターやドライバー

 オリエンタルモーターは、その社名にあるようにモーターを製造販売する企業で、特に小型精密モーターを得意とする。
 モーター本体やそれを制御するドライバーだけではなく、モーターとボールねじなどの要素部品を組み付けた電動アクチュエーター(電気エネルギーを直線や回転などの動きに変換する動力機構)や、モーターにプロペラを組み付けたファンなども幅広く手掛ける。

 創業は1885年。医療機械の製造からスタートし、その24年後の1909年にモーターの試作に成功したことを機に、モーターの製造販売に事業の軸足を移した。
 今では世界17カ国に販売拠点を持ち、全体で3200人の従業員を擁する。

バッテリー切れを気にしない

コア技術のAZシリーズを使ってロボット市場を開拓する

 同社は現在、自社製品を生かしロボット市場の開拓に注力する。
 そのコア技術になるのが、2013年に発売した「ハイブリッド制御システム αSTEP(アルファステップ) AZシリーズ」だ。
 
 AZシリーズはステッピングモーターをベースに、位置情報を記憶する独自開発のアブソリュートセンサー「ABZO(アブゾ)センサ」を搭載したもの。
 アブソリュートセンサーをモーターに取り付けると、電源をオフにした状態でもセンサーが位置情報を記憶しているため、原点復帰の作業が不要になる。しかし、通常は位置情報を記憶するためのバッテリーが要る。定期的なメンテナンスが必要なうえ、バッテリー切れを起こすと位置情報も失われてしまう。

 一方、AZシリーズに使われるアブゾセンサは、内部に搭載された複数の歯車のかみ合わせによって機械的に位置情報を記憶するため、バッテリーが要らない。そのため、バッテリー切れを気にすることなく使えるのが特徴だ。

アプリケーションの一つ

AZシリーズを搭載したパラレルリンクロボット

 最近は展示会や全国各地で開催するプライベートショー「オリエンタルモーターフェア」などで、AZシリーズを搭載した自作ロボットを積極的にPRする。

 また、19年7月にはAZシリーズを搭載した電動グリッパー「EHシリーズ」も発売した。最大把握力が25N(約2.55kgf)で、電子部品などの小物部品のピッキングの用途を見込む。
 電動グリッパーなので、つかむ部品の形状に応じて把握力やスピードも自在にコントロールできる。変形しやすい部品などでも安定してつかめるのが特徴だ。さらに、つかんだ部品の長さを測定する機能もある。

名古屋で開かれたPSには1日で約300人が集まった

 記者が取材した、19年7月17日に名古屋市千種区の多目的ホール「吹上ホール」で開かれたオリエンタルモーターフェアにも、自作ロボットやEHシリーズが展示された。
 「自作ロボットや電動グリッパーは、AZシリーズを生かせるアプリケーション(応用的な使い方)の一つ。自社製品の特徴を分かりやすくアピールするために展示した」と担当者は説明する。

 自作ロボットでは、7軸の垂直多関節ロボットとパラレルリンクロボットなどを披露した。7軸ロボットでは6種類のAZシリーズを使い、ハンドにはEHシリーズを搭載した。
 ゲームのコントローラーで7軸ロボットを操作し、クレーンゲームの要領でおみくじの入った箱をつかむ体験型のデモも実施し、来場者の関心を集めた。

 オリエンタルモーターフェアは名古屋以外では、19年6月20日に東京都大田区、7月23日に大阪市中央区、7月26日に福岡市博多区でそれぞれ開かれた。
 今後は、11月15日に愛知県刈谷市の「刈谷市産業振興センター」で、11月19日に京都市伏見区の「京都パルスプラザ」で、12月10日に埼玉県川越市の「ウェスタ川越」でそれぞれ開催する予定だ。

(ロボットダイジェスト編集部 桑崎厚史)

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