多様なプレーヤーを巻き込み、連携することが鍵になる/経済産業省 石曽根智昭 ロボット政策室長
新興国メーカーのシェアを取りに行く
――サービスロボットの分野はいかがですか? こちらは既に、新興国メーカーにかなりのシェアを奪われています。例えばレストランで使われる配膳ロボットは、中国メーカーが大きなシェアを持っています。一気に市場を奪われ、追従もできていない。多くの現場に導入されているということは、製品を改良するためのフィードバックも大量に得ていることを意味しますから、ソフトウエアなどは日々改良されているでしょう。 ――産業用ロボットとは逆で、日本が追う側ですね。 そうです。それはつまり、破壊的イノベーションを仕掛ける側ですね。配膳ロボットは新型コロナウイルス禍を機に一気に導入が進みましたが、今後はその更新需要も出てきます。その需要をしっかりと取れるよう、いろいろな要素技術を持つベンチャー企業やセンサーメーカーなど多様な企業が集まって、開発を加速する仕組みが必要でしょう。 ――なるほど。 新興国メーカーにより、日本の課題が浮き彫りになった側面もあると思います。例えば、日本の企業は「市場に出す前に完璧な状態にしなければいけない」といった考え方が強い。日進月歩のロボット産業では、その考え方だと日本メーカーが製品を発売する前に、市場を握られてしまう。製品全体としては不完全でも、開発できた要素技術から一部先行販売するようなケースもあっていいはずです。 ――それは、どういうことですか? 例えば、世界では改めてヒューマノイド(ヒト型ロボット)の研究に注目が集まっています。ヒト型ロボットとしては不完全でも、歩行の重心制御技術が電動車イスの転倒防止に使えるかもしれません。使われる中でフィードバックを得れば、その技術はさらに進化します。最初から「完成品」にこだわらず、社会実装できる技術から市場に投入することが固執する必要だと考えています。