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2023.12.18

イベント

[2023国際ロボット展リポートvol.8]商社ならではの提案を/ダイドー、山善、ユアサ商事、リョーサン、愛知産業

2023国際ロボット展(iREX2023)にはメーカーだけでなく、ロボット関連の製品を扱う機械商社や輸入商社なども多く出展した。各社は商社ならではの商材の多様さや独自のネットワークを生かし、国内外のさまざまなメーカーの製品を組み合わせた独自のソリューションや、特徴的な海外製品などを紹介した。

ポイントは「後付け自動化」と「ジグレス測定」/ダイドー

ダイドーが展示している自動生産ライン

 メカトロニクス専門商社のダイドー(名古屋市中村区、山田貞夫社長)は「ダイドーロボット館と実現する ロボットを活用した持続可能な生産現場」をコンセプトに、ファナックの協働ロボット「CRXシリーズ」などを使用したさまざまな自動化ソリューションを提案した。

 中でも見どころは、ファナックの小型切削加工機やミツトヨ(川崎市高津区、沼田恵明社長)の3次元測定機で構成された自動生産ラインだ。小型工作機械と3次元測定機の前にそれぞれCRXシリーズを設置してワーク(加工や測定の対象物)の脱着作業を自動化した他、THKの搬送ロボットシステム「SIGNAS(シグナス)」を活用して工程間搬送も自動化した。

 注目ポイントは「後付け自動化」「ジグレス測定」の2つ。ファナックの小型切削加工機は2005年製と古いが、CRXシリーズならケーブル1本でロボットを後付けできる。
 また、通常は3次元測定機にジグ(ワークを固定する補助器具)を取り付けた上でワークを測定するが、ダイドーはCRXシリーズがワークを把持した状態で直接計測するシステムを構築。「従来はジグの取り付けに人手が必要だったが、その人手も不要な自動生産ラインを実現した。エンジニアリング機能を備えた専門商社だからこそ、こうしたラインをトータルで提案できる」と東京ロボット館の三橋愛莉花館長は強調する。

ロボットを搬送して複数箇所で使う/山善

 ユニークなロボット活用法を提案して異彩を放ったのが機械商社の山善だ。山善の展示の目玉は、協働ロボットと無人搬送車(AGV)を組み合わせた「ロボこたつ&AGVソリューション」。

 AGVや自律走行型搬送ロボット(AMR)にロボットアームを搭載する提案は昨今では珍しくなくなった。ロボこたつ&AGVソリューションが異なる点は、アームとAGVを一体化していないことだ。
 テックマンの協働ロボットを設置したテーブル(こたつ)型の架台の下に、必要に応じてYOUIBOT(ユーアイボット)のAGVが潜り込み、リフトアップしてロボットを搬送する。搬送先でロボットが試験管を試験管立てに入れるなど、高い位置精度が必要な動作を披露した。
 AGVと協働ロボットが一体化していないので、顧客の要望に合わせてそれぞれ機種を選定でき、協働ロボットの搬送時のみAGVが下に潜り込むため、AGVの台数を最適化できる。

 「使用したいロボットのメーカーや、可搬質量に合わせて、柔軟に提案できるのが商社である当社の強み」とトータル・ファクトリー・ソリューションの下地智マーケティング部長。「ロボこたつ&AGVソリューションは現在開発中の段階。架台に積んでいるバッテリーを小さくして、架台のサイズをコンパクトにしたい」と語る。

オリジナルのシステムで加工の前後工程も自動化/ユアサ商事

ユアサ商事は、アルミ部品の自動生産ラインを披露した

 ユアサ商事は、アルミ部品の自動生産ラインを想定したデモシステムを展示した。ユアサ商事は商社だが、近年はオリジナル製品も販売しており、デモシステムにもそれらを組み込んだ。

 「Robo Combo(ロボコンボ)」は産業用ロボットとストック棚を組み合わせた自動化システムで、工作機械にワークを自動で供給する。取り出した加工後のワークは、人工知能(AI)を活用した外観検査装置「F(ai)ND OUT EX(ファインドアウトEX)」に送る。ファインドアウトEXは良品のデータのみでAIに学習させられるため、導入までの時間が短い。ロボコンボもファインドアウトEXも同社オリジナルの製品だ。

 機械エンジニアリング本部中部工業機械部(岡崎)の高橋裕紀課長補佐は「ロボコンボやファインドアウトEXなどで、加工の前後工程も提案できるようになった。生産現場の多様化するニーズに応えていきたい」と話す。

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