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2023.12.07

連載

[ショールーム探訪vol.19]SIerがSIerを育てる/五誠機械産業「九州ロボットセンター」

五誠機械産業(佐賀市、川島晃会長)は、「九州ロボットセンター」を運営する。ショールーム機能に加えて、システムインテグレーター(SIer、エスアイアー)の教育施設としても使われるのが大きな特徴だ。小松直博センター長は「リーマンショックによる不況を機に日本の技術者の海外流出が増加した。外部発注などで生産技術部門は縮小し、日本の技術力が下がったように感じる。SIerの技術力向上に少しでも貢献できれば」と語る。

SIerの駆け込み寺

 五誠機械産業は工作機械の商社として1978年に創業した。今では工作機械だけでなく産業用ロボットの技術商社として、システムインテグレーションも手掛ける。2017年に産業用ロボットの展示施設として、本社に隣接する場所に九州ロボットセンターを開設した。最寄り駅のJR長崎本線鍋島駅は、博多駅から1時間足らずの所にありアクセスが良い。

 同センターはSIerの研修センターを併設しているのが大きな特徴だ。研修センターでは産業用ロボットを安全に取り扱うために、労働安全衛生法第59条第3項で定められた特別教育をする。小松センター長は「当センターは、どちらかといえば展示施設よりも、SIerの教育施設としての比重が高い。1、2年前から自動化システムを内製する企業が増えつつある。安全な運用のため、まずは産業用ロボットを安全に使うためのルールを学んでもらいたい」と語る。
 九州地区にはSIerの教育施設が少ないため、SIerのみならず自動化システムを初めて構築する企業にとり駆け込み寺のような存在となっている。

  • 九州ロボットセンターの外観

  • 協働ロボットや垂直多関節ロボットの他に、スカラロボットなどさまざまなロボットを展示する

出張教育やイベントにも注力

安川電機の双腕ロボット「DIA10-NX100」とヤマハ発動機の垂直多関節ロボット「YA-R5F」

 展示物でまず目に入ったのはヤマハ発動機の垂直多関節ロボット「YA-R5F」と安川電機の双腕ロボット「DIA10-NX100」だ。小松センター長は「DIA10-NX100は3台しか存在しない20年前のプロトタイプ機。当センターが誰でも自由に操作を体験できる唯一の場ではないかと思う」と笑う。

 展示されているDIA10-NX100が右手に持っているのは筆。これで何をするかというと、陶磁器の絵付けだ。ベルトコンベヤーで運ばれてきた陶器をYA-R5Fがつかんで、DIA10-NX100の筆を持っていないもう片方の腕に渡す。そして筆で花びらの絵を陶磁器に書いてみせ、佐賀の特産品である陶磁器業界でも活用できることをPRする。
 この一連の動作を、毎年8月に開催する「SAGAものスゴフェスタ」というイベントで子どもたちにむけて披露する。今年はイベントのイメージキャラクターのイラストを紙製コースターに書いた。

「DIA10-NX100」が絵付けをする様子

 YA-R5Fは、今年3月に運用を開始した。センター内で展示するだけでなく、出張教育にも活用する。「これまでは出張教育に架台と一体式のロボットを使っていた。しかし、重さが200㎏あるため、運ぶ際にトラックを使わないといけない。それに加え、下ろす際にクレーンが必要になるなど小回りが利きにくかった」と小松センター長。「YA-R5Fは3分割できる構造のため、一般的な乗用車に乗せることができ、フットワークが非常に軽くなった」と語る。

 出張教育は地域を問わず実施しており、ティーチング(教示)の方法を教える「入門編」や、ロボットの修理やメンテナンスの方法などを教える「検査編」の2種類に対応する。小松センター長は、産業用ロボット特別教育インストラクターとしてこれまで約800名に講義をした実績がある。

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