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2020.02.07

連載

[SIerを訪ねてvol.12]人材派遣業から生まれた異色のSIer【前編】/アウトソーシングテクノロジー

今回紹介するシステムインテグレーター(SIer、エスアイアー)は、2019年にSIer業界に参入したアウトソーシングテクノロジー(東京都千代田区、茂手木雅樹社長)だ。同社は大手人材派遣業のアウトソーシングのグループ企業で、技術系人材の派遣を手掛ける。エンジニアを労働力として派遣する従来のビジネスモデルに加え、技術的な困りごとの解決を請け負うビジネスモデルを確立するのが参入の狙い。同社内では人材派遣ではなく業務請負に力を入れる部署が複数あるが、プロダクトソリューション部の関西開発センターでは、自動化システムの構築を請け負うことで顧客の人手不足解決を図る。SIer事業の立ち上げを主導した関西開発センターの新佳久センター長に、事業の現在地とビジョンを聞いた。

新設のSIer事業は多国籍チーム

 アウトソーシングテクノロジーがシステムインテグレーションを事業とする関西開発センターを立ち上げたのは2019年8月のことだ。立ち上げのために採用した15人と、新佳久センター長を含む2人のベテラン技術者の17人でスタートした。
 
 採用した15人の中には、グローバル枠で新卒採用した外国人が7人いる。韓国、中国、インド、バングラデシュ、スリランカ、モンゴルといったアジア出身の人材だ。入社した後にSIer事業に興味のある人はいるかと呼び掛け、応じたメンバーを配属した。
 その他、中途採用した若手社員もいるが、エンジニアの仕事は未経験の人が多い。20年1月には別部署のエンジニア5人が合流し、22人の体制となった。

 15人の新入社員は現在、神戸市中央区のポートアイランドにある関西開発センターで、機械全般の制御に使われるプログラマブル・ロジック・コントローラー(PLC)のプログラミングを学びながら、少しずつ実務にも取り組み始めたところだ。
 新センター長は「最初の基礎的なところを教えて、あとは実務の中で覚えていってもらいたいと考えている。あまり教育し過ぎても良くない。その意味でも、外国人のメンバーが在籍しているメリットは大きい。外国人のメンバーは皆自ら率先して学んでいるので、周囲にもいい影響を与えている」と話す。

 新入社員に産業用ロボットの制御機器ではなく、PLCのプログラミングを教えているのは、まずは一般的な機械の制御を覚えてもらい、それからSIerとしてロボットの制御や周辺機器との組み合わせを学んでもらうためだ。
 「SIerは機械設計や電気設計、ソフトウエアなど幅広い知識が求められる。人材派遣の部署でも、PLCのプログラムを作成できる人材の需要はかなり高い。SIerを育てるには、一番の近道ではないかと考えている」と新センター長。

「ロボット導入.com」を立ち上げ

ロボット導入の情報発信サイト「ロボット導入.com」も開設

 新センター長は、同社に入社してからまだ2年ほどだ。それ以前には、半導体製造装置メーカーやシステム開発会社に勤めていた。半導体製造装置メーカーでは電気設計や機械設計、PLCなどのプログラミング、システム開発会社では制御系ソフトのプログラミングに携わった経験を持つ。
 システム開発会社では医薬品や繊維、食品の工場にロボットを導入する仕事も手掛けた。「自分のようにロボットや周辺機器をコーディネートしてシステム開発を請け負う人がSIerと呼ばれていることを、2、3年前に知った」と話す。

 SIerを事業として確立するため、入社後の18年6月にロボット導入の情報発信やコンサルティングをするウェブサイト「ロボット導入.com」を立ち上げた。
 「ロボットシステムには大きな需要があり、それを掘り起こすには、ロボットを使った自動化のノウハウをわが社の中に閉じ込めておくのではなく、いろいろな業界に展開していかなければならない」と力を込める。

 ロボット導入.comの反響は大きく、「相談やコンサルティングの問い合わせが多数届いている」と言う。19年8月に事業を立ち上げ、実務を始めたのは10月。「まだ3カ月ほどだが、20年度の売り上げとして3億円程度を目指す。現時点でいくつか受注があり、目標達成のめどが立っている」と自信を見せる。

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