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2019.06.25

連載

[注目製品PickUp!vol.15]シンプルなシステムで導入しやすく【後編】/川崎重工業「duAro」

柔軟な運用ができるduAro(デュアロ)は、中小企業も導入しやすい。ユーザーのニーズにより広く応えるべく、2018年6月に「duAro2」(デュアロ2)を発売した。上下方向のリーチや可搬質量を拡大し、台車をよりコンパクトにした。今後、後継機種の開発に向けて性能や機能の強化と、コンセプトである「Easy to Use(イージー・トゥ・ユース=簡単に使える)」の両立に挑戦する。

導入実績が増加中

 duAro(デュアロ)が発売されるまで、川崎重工業の製品ラインアップの中心は垂直多関節ロボットで、一定量以上の量産や、十分な設置スペースがあることを前提にしていた。
 それに対し、プログラムの変更が容易で人と共存できるデュアロは、多品種生産でスペースにも限りのある中小企業に最適なロボットだ。「もともと、ユーザーのニーズに応えて開発したマーケットインの製品。そして、中小企業向けのロボットという意味でも、私たちなりの一つの回答と言える」と長谷川理事は語る。

 「これまでの産業用ロボットでは、システムの立ち上げには、ロボットハンドの製作や使い方の教育期間を含め3カ月程度かかることが多かった。しかし、デュアロを使ったシステムではこれを約1か月に短縮でき、さらに今後は2週間程度での導入を可能にしたい。サポート体制の充実や、使いやすさのさらなる向上を目指す」と長谷川理事は話す。

 イージー・トゥ・ユースのコンセプトに基づいて導入しやすさを追求した結果、「可搬質量などのバリエーションの少ない機種なので他機種とは単純に比較できないが、導入実績は加速度的に増えている」と自信を見せる。

duAro2、発売

 初代デュアロ(デュアロ1)は「使いやすさを追求するため、機能面で割り切りが必要だった」と長谷川理事。その結果、アームの上下への可動範囲は150mmと狭い。デュアロのバリエーション展開としてデュアロ2を開発するにあたり、電気製品などの箱詰め作業をターゲットの一つとした。段ボール箱に、製品や付属品を入れるという作業で、「今はほとんど人がやっている」(長谷川理事)という。

 そういった箱詰め作業を少しでも自動化するには、もっと広い可動範囲が必要だ。そこで500mm以上の可動範囲を実現するため、デュアロ2ではリンク型アームを採用。これは回転運動の組み合わせで上下動を生み出す構造で、長谷川理事は「実績のある技術で、信頼性が高い。スカラロボットの水平方向の動作に使っている機構を垂直方向にも使った」と話す。

 デュアロ2では、上下の可動範囲を150mmから550mmに、可搬質量も左右2kgずつから3kgずつに拡大。発売は18年6月。台車がコンパクトになり、ロボット本体と台車を切り離して別置きにすることも可能になった。また、新型コントローラーはビジョンセンサーを使う場合でもハードウエアを追加する必要がなく、手軽に選択できるようになった。

  • 長谷川省吾理事は「電気電子分野の小物部品、要素部品の工場で好評」と語る

  • duAro1

  • duAro2

協働ロボットの難しさ

 デュアロは導入や立ち上げが容易なので、システムインテグレーター(SIer、エスアイアー)にかかるシステム構築の負荷も小さい。さばき切れないほどの引き合いや受注を抱えるSIerもある今、SIerの負荷軽減は重要な課題だ。
 長谷川理事は「ロボットの普及のためにも、小さな手間で数をこなして利益を出すビジネスモデルを確立したい」と話す。

 また、デュアロシリーズのさらなるバリエーションの拡充も検討する。
 自動化のニーズが高い物流分野からは可搬質量の拡大を求める声も強いが、「重量物を空中でハンドリングすると、たとえロボット自身の安全機能が万全でも危険性が残る」と長谷川理事。「速度と生産性のバランスが重要」と協働ロボット開発の難しさを語る。

  • duAro2の上下の可動範囲

  • duAro2を使った段ボール箱への箱詰め作業(川崎重工業提供)

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