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2019.02.22

インタビュー

世界の猛者。ABBが食品分野に注力するワケ【その3】/ABB中島秀一郎ロボティクス事業部長

一般に「食品業界はロボット導入が遅れている」と言われる。その要因についてスイスABBの日本法人の中島秀一郎ロボティクス事業部長は「食品分野には、特有の難しさがある」と話す。それでもABBが食品業界に挑む理由とは?!【その3】では食品業界での課題や、今後のロボット普及への展望を伺った。

失敗しないロボット導入のために

「各段階の着実なクリアが大切」(中島秀一郎事業部長)

――前回は「食品は大きさや形状が一つ一つバラバラで、ロボットで扱うのが難しい」とお話しされていました。それ以外で難しい点はありますか。
 ロボットメーカーとしては価格設定が難しいです。食品業界は中小規模の事業所が大半を占めます。その規模ですと金額の高い生産設備や自動化への投資を決断するのは、相当な勇気が要る。ですから、メーカーはシステム全体の価格を下げる努力が必要です。同時に、お客さまがより投資の効果を得られるよう当社は最大限まで努力します。お客さまの課題や要件を理解し、シミュレーションや実機試験による事前検証を経て、現場でロボットが稼働するまでサポートすること。各段階を一つずつ着実にクリアして投資リスクの最小化を目指しています。

――そこまでするロボットメーカーは多くないと思いますが、他社との違いは感じますか。
 当社はロボット単体だけではなく、システムインテグレーター(SIer、エスアイアー)と一緒にシステム構築をし、ソフトウエアなどとも組み合わせて販売しています。お客さまの導入時の作業負担を減らす工夫もします。そこが一般的なロボットメーカーのビジネスとの違いで、当社が食品事業に注力できる理由でもあります。

日々、実機検証を繰り返し、ユーザーの投資リスクを下げる

――大きな投資なので、導入を検討するお客さまとしては「本当にメリットがあるのか」は気になるところですね。
 お客さまの導入効果を分析し、システム構築を検討した上で提案します。繰り返しになりますが、お客さまの課題や要件への当社の理解度が大切です。何度もお客さまの工場に足を運び、ロボットを導入して自動化すべきところをお客さまと相談して導入まで進めます。お客さまに十分な効果が見込めない時には、はっきり「ロボットの導入はお勧めしません」と申し上げる場合もあります。当社が関係した全ての現場で最大限にロボットを活用いただいている、とまでは言いきれませんが、そのための努力は惜しんでいません。

――そのような販売方法だと、アフターフォローの充実も必要ですよね。
 当社はロボットを売って終わりではありません。ご購入いただいた後もサービスの必要がある。特に食品ではピッキングの対象物の難しさから、調整が要ります。食品向けにロボットシステムを販売するには、現場での粘り強さが必要です。当社は面倒見の良いメーカーなのかもしれません。ただ、作業の全てを当社スタッフだけでは網羅できません。そこでSIerとの関係性やお客さまへの操作指導も大切です。

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