2023.10.16
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水平だけでなく垂直にも! 最先端の無人搬送ソリューション/VisionNav Robotics

センシング技術はさらに高く

トラックへの自動積み下ろしを実現する「VNE20」(提供)

 国内の物流現場では、各社が「2024年問題」の解決に向けて取り組んでいる。2024年問題とは、24年4月からトラックドライバーの時間外労働時間の上限規制が適用されることで生じる、さまざまな問題の総称。ドライバーが倉庫に到着後、トラックへの荷物の積み下ろしなどを待つ「荷待ち」の時間が長時間労働の要因の1つになっている。  その解決策の1つが、物流現場へのAGFの導入という。AGFで荷物の積み下ろしや搬送を自動化、効率化できれば、ドライバーの待機時間を減らせる。同社はトラックへの積み下ろしに向く「VNE20」を中心に、搬送作業の自動化を「トラックソリューション」として提案する。  VNE20は可搬質量が最大4t、揚げ高が最大4.5m。8.5度までの傾斜のあるスロープを登れる。トラックの乗り入れ場所のような、屋外に近い路面でも走行できるようにした。  Kikiゼネラルマネージャーは「中国の企業から、トラックへの自動積み下ろしの要望を受けたのがきっかけだった。20年に本導入し、他の現場にも展開している。活用シーンを増やすべく、ユーザーの意見を取り入れながら開発に取り組む」と話す。

センシング技術について説明する石毛セールスディレクター(提供)

 AGFの走行方式も新しくした。従来、壁や天井に設置した2次元コードを読み取り自己位置を推定する方式のみだったが、22年に「SLAM(スラム)方式」を採用した。  スラム方式は、センサーで自己位置の推定と周囲のマッピングをする。レーザー光で周囲を検知する3次元LiDAR(ライダー)を搭載しており、倉庫内の環境を立体的に捉える。  同社のAGFは、2次元コード式とスラム方式から稼働方法を選べる。一般的に2次元コード式の方が高い精度でAGFの位置を制御できるが、同社のスラム方式は2次元コード式と同等の精度を誇るという。  さらに、AGFが自己位置を見失わないような機能を開発した。周囲のマッピングをした際に、位置が変動する物体のデータを排除する。  例えばマッピング時に、パレットやかご車が置いてあったとする。そのまま認識した場合、それらを含めて周囲の環境とする。その後パレットやかご車が移動すると、マップとズレが生じ、AGFは自己位置を見失って停止してしまう。そうした移動するものをデータから排除することで、AGFが迷子になるのを防ぐ。

日本に新拠点を開設

展示会場で搬送デモをする同社のAGF

 今後のグローバル展開を加速するため、24年に日本に「グローバルファクトリー」を開設する。同施設は、部品を製造し全世界へ供給するパーツセンターとしての役割を担う。また人員も増やし、日本国内でのサポートの充実も図る。  Kikiゼネラルマネージャーは「日本は製造業のレベルが高く、優れた管理体制や生産工程などをわが社にも取り入れていきたい。日本のユーザーとの協力関係も強いため、グローバルファクトリーの設置を日本に決めた」と語る。  まずは部品の生産やサポート体制の確立に取り組むが、いずれは開発拠点としても運用する。「現在わが社のAGVは、有人フォークリフトをベースにしている。今後は機体も開発し、AGFのソフトウエアとハードウエア、制御システムなどを全て内製化したい」と意気込む。  全世界へ搬送ソリューションを展開するうえで、日本を重要な拠点として位置付ける。また国内での存在感を一層強めるべく、展示会への出展も予定する。  10月18日から名古屋で開催される「メカトロテックジャパン(MECT)2023」では、岡谷鋼機のブースにVisionNav RoboticsのAGFが展示される。また12月には、東京で開かれる「2023国際ロボット展(iREX2023)」に自社ブースを出展する。搬送業務に課題を抱えるユーザーに向け、同社の技術を直接アピールする。

(ロボットダイジェスト編集部 水野敦志)

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