[創刊特別対談]石井孝裕ロボット政策室長×久保田和雄SIer協会会長【後編】
ビジョン実現に向け一丸となって
久保田 SIer協会でも技術分科会で業界標準のようなものを作ろうと考えています。 石井 自動車業界では、2014年にエンジンの基礎研究を行うAICE(アイス、正式名称=自動車用内燃機関技術研究組合)という組織ができました。国内の全乗用車メーカーと産業技術総合研究所、日本自動車研究所などが参加しています。一見、競争領域のように思えるエンジンの分野でも、基礎研究など協調していくべき領域があります。AICEの場合は、産学で共同研究していくため、人材育成といった効果も見込めます。ロボット産業でも同様に、「隣を見るのではなくて、遠い将来を一緒に見る」ことで競争力を高めていける部分があるのではないかと思います。7月に設立したばかりではありますが、ぜひともSIer協会として、将来像を描いたビジョンを作っていただきたいと思います。
久保田 協会を設立したばかりで何をどこまでできるか分かりませんが、企業でも団体でも中長期のビジョンは必要です。できれば具体的な数値目標なども盛り込みたい。日本ロボット工業会が発表する産業用ロボット単体の生産額や受注額とは別に、ロボットシステムの生産額や受注額の統計を取りたいですね。いずれにせよ来年半ばまでには協会としての実績も見え始め、何をやらなければならないのかがはっきりと分かると思うので、皆がそこに向かって走れるようなビジョンを策定するつもりです。 石井日本は課題先進国と言われますが、ロボットの導入を通じてその課題を解決していく。そのうえで、SIerが一つの鍵になると信じています。日本のみならず他の先進国も、近い将来、日本と同じような課題に直面する日が来ます。そうなれば日本で培ったSIerの知見が生かせるはずです。ビジョンの実現に向けて、われわれとしても協力できるところは協力していきたいと思います。ロボット業界の発展に向けて一緒に取り組んでいければと思います。
——終わり (司会:編集長八角秀、記事:ロボットダイジェスト編集部)
プロフィール 経済産業省 製造産業局 産業機械課 ロボット政策室長 石井孝裕(いしい・たかひろ) 2005年3月早稲田大学大学院理工学研究科修士課程修了。2005年4月経済産業省入省、製造産業局参事官室配属。製造産業局自動車課課長補佐や産業技術環境局研究開発課課長補佐等を経て2018年7月より現職。東京都出身、1981年2月生まれ。 FA・ロボットシステムインテグレータ協会 会長 久保田和雄(くぼた・かずお) 1975年3月武蔵工業大学工学部卒。三明機工社長。日本ロボット工業会理事。2018年7月、FA・ロボットシステムインテグレータ協会が発足し、初代会長に就任。日本鋳造協会機材部会および国際部会役員。日本ダイカスト協会会員。静岡県出身、1952年08月31日生まれ。