• インタビュー
2024.10.24
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生産ラインの構築を顧客との協調領域に/日立オートメーション 新井美帆社長

日本型と欧米型の良いとこ取りを

同社が提案する今後の製造業の在り方(提供)

――どのように転換すべきでしょうか。  生産技術は協調領域と競争領域に分解し、業界の知恵を結集すべきと考えています。特にデジタルや自動化など生産ラインに求められる最新技術は、わが社のようなシステムインテグレーター(SIer、エスアイアー)も豊富に知見を持っています。そういった部分を協調領域にすれば、最先端の技術を生産ラインに取り入れられます。 ――欧米では早くからそのようなラインビルドの発想ですよね。  そうなんです。欧米では工場や大掛かりな生産ライン全体を構想設計から全体最適を目指して手掛けるSIerが多くいます。生産技術をアウトソースすることで、依頼元のメーカーは製品開発や設計、生産技術の中でも核となる部分などに経営資源を集中できます。一方、国内は状況が異なります。メーカー社内の生産技術部門が構想設計や全体構築を担い、各工程の生産設備やロボットなどの自動化機器の構築をSIerが担うケースが少なくありません。そのため、SIerは中堅や中小規模が多いのが現状です。ただ、人手不足が進めば、メーカー側の生産技術も低下する可能性は大いにあります。 ――国内のロボット業界では、よく指摘されています。  19年に日立が買収した米国の大手ロボティクスSIerのJRオートメーションから、欧米型のラインビルドのノウハウを学んでいます。確かに、欧米型のラインビルドには、最新技術を取り入れやすいなど利点があります。一方、日本型のラインビルドやSIにも強みがあると再発見しました。それは専門性や緻密性です。そこで、日立オートメーションを設立することで、JRオートメーションと、欧米型と日本型の利点を相互に生かす形を目指しています。JRオートメーションは主に欧米で事業展開しており、日本や東南アジア、インドを担当するわが社と2社でグローバル展開を目指しています。

――欧米型の提案に対し、国内メーカーから抵抗感はありませんか。  ないと言ったらうそになります。ただ、生産技術職で人手不足が進んでいるのも事実です。さらに、国内ではこの30年にわたり、経済成長が停滞していました。その間、工場を新設しなかった企業も少なくありません。最近では、顧客から「生産技術に改善活動のノウハウは多くあるが、新規立ち上げの知見がない」といった話を伺う機会が多くなりました。 ――確かにゼロベースでは、異なる知見が必要です。  だからこそ、そういった知見を持つSIerの協力が必要でしょう。日立グループで工場に関わる全てのことが解決するとまでは言いません。でも、グループ内に見識や解決への手がかりを持つ人材は必ずいます。壁に当たった際にグループに掛け合うと、必ず反応があるので、私自身が毎回驚かされています。そういった層の厚さは、国内でも屈指と自信があります。日立には「Lumada(ルマーダ)」と言われる先進的なデジタル技術を活用したソリューション・サービス・テクノロジーがあり、顧客との協創を通してわが社もその一翼を担い、ITからOTを一括して提供できる「トータルシームレスソリューション」に挑戦していきます。

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