リニアコンベアを提案の核に/ヤマハ発動機 江頭綾子ロボティクス事業部長 インタビュー
ベルトコンベヤーからリニアへ
――リニアコンベアを使うメリットは?
搬送機器としてはベルトコンベヤーの方が安価ですが、組み立てなど精密な作業をする際は補助具(ジグ)にワークをセットし直すなど、工程が複雑になります。これでは生産効率は上がらず、ジグなども多数必要です。一方、リニアコンベアは高速搬送に加え、精密な位置決めができるため、ワークをリニアコンベアに載せたままさまざまな作業が可能です。高速かつ精密な位置決めは表面実装機でも重要ですから、要素技術は社内で開発し保有しています。精度に加え、設備としての信頼性の高さにも自信があります。
――高精度な位置決めができることがポイントなのですね。
その他にもさまざまなメリットがあります。ワークを等速で一斉に流すベルトコンベヤーと違い、リニアコンベアではワークを載せたスライダーの動きを1台ずつ制御できます。わが社は、搬送に関する2つの考え方で、ユーザーの生産性を高められればと考えています。
搬送時間をどう変える?
高い加減速で一瞬のうちにワークを搬送
――2つの考え方とは?
1つ目が、搬送時間を限りなくゼロに近づけること。搬送は付加価値を生む工程ではありませんので、短ければ短い方がいい。リニアコンベアを使えば、高い加減速で一瞬のうちにワークを搬送できます。
ワークを動かしたまま検査も行う
――もう1つは?
搬送時間を、付加価値のある時間に変えることです。搬送しながら、検査など別の作業も同時にする。ワークの動きを精密に制御できますので、さまざまな作業が可能です。こうしたリニアコンベアのメリットを理解してもらうには、実際に見てもらうのが一番早いため、来年後半には皆さまにお見せできる生産ラインを整備します。
――その生産ラインはどこに設置予定ですか?
ヤマハ発動機グループのヤマハモーターエレクトロニクス(静岡県森町、橘内透社長)の本社内に設置しています。ライン自体は既にあるのですが、工場見学が可能な環境を整備しているところです。ヤマハモーターエレクトロニクスはヤマハグループの電装部品などを製造する会社で、リニアコンベアを使った生産ラインで電動アシスト自転車「PAS(パス)」のドライブユニットを生産します。展示用のデモシステムではなく、実際の生産で稼働するシステムですので、現場に導入した際のメリットなどがよりわかりやすいと思います。