生産現場のロボット化と自動化を支援するウェブマガジン

2022.12.23

リニアコンベアを提案の核に/ヤマハ発動機 江頭綾子ロボティクス事業部長 インタビュー

ベルトコンベヤーからリニアへ

リニアコンベアモジュール「LCMR200」

――拡大する自動化需要に対し、どういったシステムを提案しますか?
 「リニアコンベアモジュール」を中心に、スカラロボットなどを組み合わせたシステムを提案したいと考えています。リニアコンベアでワーク(扱う対象物)を搬送し、スカラロボットで作業します。

「リニアコンベアを使うメリットは多い」と江頭事業部長

――リニアコンベアを使うメリットは?
 搬送機器としてはベルトコンベヤーの方が安価ですが、組み立てなど精密な作業をする際は補助具(ジグ)にワークをセットし直すなど、工程が複雑になります。これでは生産効率は上がらず、ジグなども多数必要です。一方、リニアコンベアは高速搬送に加え、精密な位置決めができるため、ワークをリニアコンベアに載せたままさまざまな作業が可能です。高速かつ精密な位置決めは表面実装機でも重要ですから、要素技術は社内で開発し保有しています。精度に加え、設備としての信頼性の高さにも自信があります。

――高精度な位置決めができることがポイントなのですね。
 その他にもさまざまなメリットがあります。ワークを等速で一斉に流すベルトコンベヤーと違い、リニアコンベアではワークを載せたスライダーの動きを1台ずつ制御できます。わが社は、搬送に関する2つの考え方で、ユーザーの生産性を高められればと考えています。

搬送時間をどう変える?

高い加減速で一瞬のうちにワークを搬送

――2つの考え方とは?
 1つ目が、搬送時間を限りなくゼロに近づけること。搬送は付加価値を生む工程ではありませんので、短ければ短い方がいい。リニアコンベアを使えば、高い加減速で一瞬のうちにワークを搬送できます。

ワークを動かしたまま検査も行う

――もう1つは? 
 搬送時間を、付加価値のある時間に変えることです。搬送しながら、検査など別の作業も同時にする。ワークの動きを精密に制御できますので、さまざまな作業が可能です。こうしたリニアコンベアのメリットを理解してもらうには、実際に見てもらうのが一番早いため、来年後半には皆さまにお見せできる生産ラインを整備します。

――その生産ラインはどこに設置予定ですか?
 ヤマハ発動機グループのヤマハモーターエレクトロニクス(静岡県森町、橘内透社長)の本社内に設置しています。ライン自体は既にあるのですが、工場見学が可能な環境を整備しているところです。ヤマハモーターエレクトロニクスはヤマハグループの電装部品などを製造する会社で、リニアコンベアを使った生産ラインで電動アシスト自転車「PAS(パス)」のドライブユニットを生産します。展示用のデモシステムではなく、実際の生産で稼働するシステムですので、現場に導入した際のメリットなどがよりわかりやすいと思います。

TOP