[SIerを訪ねてvol.23]機械の知見が強み/三宝精機工業
得意は加工機周り
レールを使いロボットを長距離移動させたいとの要望に対しては、「シミュレーターでの検証結果を基に、ワークを持ったロボットがレールで長い距離を移動するのではなく、複数台のロボットでリレー的にワークを受け渡す形を逆に提案することもある」(瀬戸ロボット技術課長)など、案件を深く理解し提案力も高い。 機械設計上のポイントとしても「可動部を減らすシンプルな機構などによる故障率の低減と、顧客が多く使用している保守部品との共通化による保全コストの低減、切りくず処理やつかみ方の工夫でワークへのキズ付きや『チョコ停』の防止」(西井機械技術課長)と、これまでの経験を生かし、設備稼働率や品質などに十分配慮している。
コアはオーバーホールやレトロフィット
同社のシステムインテグレーション(SI)業務の歴史は意外なほど長い。それまでオーバーホールとレトロフィットだけだったが、2000年ごろからロボットSIのニーズにも対応するように。そして09年にロボット関連部門を正式にスタートさせた。ベースは代理店を務めるファナックの産業用ロボットだが、顧客が他社製ロボットを望めば対応できる。12年には画像処理装置とロボットを組み合わせて展示会に出展し、自動車の外装部品を検査するロボットシステムのソリューションが注目を集めた。これが本格的なスタートだった。 SIer事業は緩やかではあるが右肩上がりに伸びてきた。しかし、新型コロナウイルス禍の現在、「これまでで最も厳しい底の状況」(金子社長)という。顧客がコロナ禍でさらにコストダウンの必要に迫られていることで、SIerビジネスがコスト競争に陥りつつある現状を金子社長は危惧する。 レトロフィット事業を手がけているSIerの強み、良さをよく分かる顧客は少ないのかもしれない。機械メーカーとは違う知見も豊富で、ロボットと加工機の位置関係から、メンテナンスのしやすさや移動距離の短さなどを常に計算に入れるなど、現場にフィットしたシステムを構築できる強みをより打ち出したいところだ。 ただ、反省もある。機械に精通することで、「強度計算などで念には念を入れたオーバースペックの仕様になってしまう場合もあるのでは……とも考える」(西井機械技術課長)。今後のコストダウンの鍵はこの辺りにもありそうだ。