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2023.03.15
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[活躍するロボジョvol.17] 私の技術で、もっと多くの人を楽に/シナノケンシ 礒野仁美さん

緊急時に気付いた、自社の強み

「電動3爪ロボットハンド」を見つめる

 新規分野のため、部署や会社全体で協力して手探りで進める取り組みも多い。  チームプレーの大切さが身に染みた出来事がある。昨年、展示会に出展するデモ機を2週間前にテスト稼働させた際に、ショートで故障させてしまった。原因は過電流。発送期間を考えると、1週間程度で修理しなければ間に合わない。  そこで、部署外にも協力を募り、必要な基板などをかき集め、何とか間に合わせた。「あの時は焦りましたが、チームプレーで乗り越えられました。協力するのは会社全体の社風。それに助けられました」と振り返る。  普段から、その社風を存分に生かす。例えば、本社内にある生産現場を訪れて、現場の作業者からニーズを聞き取りして、ロボットハンドの機能開発に役立てている。「先輩も、他部署も気軽に相談に乗ってくれます。お世話になってばっかりです」と笑う。

「自分なりの答えを持つ」

ロボットの教示作業もお手のもの

 協力や相談を仰ぐ中で心がけるのは、「やみくもに相談するのでなく、一度は自分なりの答えを持った上で質問すること」。  自分の答えと、相手の返答を突き合わせることで、間違いを修正できる。合っていれば自信を深められる。  同じ部署の佐々木岳課長は「目標を明確にして、課題解決に取り組んでいる。ロボット関連は難易度の高い業務だが、自分から積極的に取り組んでいる」と評価する。

礒野さんがプログラムを担当した今年1月の展示会のデモ機

 同社では、展示会の会場や営業のサポートで技術スタッフが顧客を相手に説明する機会が多い。顧客の質問に答えられず、悔しい思いをした時期もあった。  ただ、その悔しさをばねに知識を身に付けて最近は余裕も出てきた。顧客の隠れたニーズにも気付けるようになった。  「今年1月の展示会では『導入のしやすさ』に特徴があるパラレルリンク型の『デルタロボット』の話を聞いてくる来場者が多かったと感じました。同ロボットの提案や日々のロボットハンド関連の機能開発にも、その観点を生かしたいです」

「私が携わった技術で多くの人の負担を減らしたい」と意気込む

 冬にはスノーボード、夏にはパラグライダーと自然を相手にしたスポーツを楽しむ。「普段はロボットを制御している。一方、自然は自分の力では制御しきれない。だからこそ、自然と向き合う時間を楽しんでいるのかも」と微笑む。  今後、当面の目標は機械と電気、プログラムの知識を身に付けること。その先には、大きな目標もある。  「ロボットは人の作業を代替して、負担を減らします。私が直接携わった技術で、もっと多くの人が楽になってほしいです」と将来を見据える。

(ロボットダイジェスト編集部 西塚将喜)

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