2020.12.02
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シールスポンジ材をロボが貼る/豊臣機工

人とロボのすみ分け

ローラーとばねの制御で人の力加減を再現

 ロボットスポンジシーリングは、長尺で柔らかいシールスポンジ材をチューブ内に吸引して保持し、先端ツールのローラーとばねの制御で人の力加減を再現する。力加減を再現する先端ツールと、部品のどの位置にもシールを貼れるようにする走行レール付きの旋回台は特許申請中だ。  システム全体の小型化と貼り付け精度の向上も進め、17年には量産体制も整えた。

「難しい貼り付け作業をロボットなら再現性高く、高精度にできる」と成瀬薫部長

 現在、豊臣機工の工場には2台のロボットスポンジシーリングが稼働しており、作業の自動化に貢献している。しかし全自動というわけではない。作業を始める時のシールスポンジ材と剥離紙のセットは手作業だ。  また「長い距離や複雑な経路を貼るには自動化のメリットは十分にあるが、単純なシール貼りなら人には勝てない」と成瀬部長。  これまでの作業を全てロボットに置き換えるわけではなく、内容に応じた最適な役割分担を進める。

三位一体の外販体制

豊臣機工、トライエンジ、進和の3社が協業

 ロボットスポンジシーリングの開発、量産、自社内での活用に成功した豊臣機工は、次に外販することを決めた。  しかし「うちは部品メーカーであり、物を作ることには長けているが、製品を販売する経験はなかった」(成瀬部長)。そこで、それまでにも付き合いのあったトライエンジニアリングと進和に声をかけた。そして18年、自社工場でノウハウや経験を蓄積した豊臣機工、顧客に合わせたシステムの設計と製作をするトライエンジ、全国の販売網を生かし販売とPRをする進和の3社による外販体制が整った。    本格的に販売を開始したのは今年の8月から。当初は進和による全国でのPRと同時に、展示会を活用したアピールも予定していた。しかし、新型コロナウイルス感染症の影響で、展示会での発表は断念。代わりにウェブを使ってのPRを12月から始めるという。

自動車だけでなく、さまざまな業種で使われるシールスポンジ材

 外販を進めながら、対応できるシールスポンジ材種も増やす。  現在、豊臣機工では2種類のシールを使っているため、自動化ツールもそれらの種類に合わせてある。しかし、業種や使用される場所によって、幅や高さは異なる。顧客に合わせた要望にも、今後順次対応する。  また「すでにカットされた帯状のシール材だけでなく、カット前の巻かれた状態のものにも対応できるよう、自動切断機能を持つタイプも用意する」とトライエンジの岡部長は説明する。  独自技術の外販について「技術を独り占めすれば多くのメリットを得られるだろう。しかし、自動車だけでなく、いろいろな業種で使われることで、思わぬ使用方法が見つかることもあるし、現場で働く多くの作業者の負担を軽くすることができる」と成瀬部長は強調する。

(ロボットダイジェスト 編集部 渡部隆寛)

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