• インタビュー
2020.08.31
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日本ですべきことは、ただ一つ。たった一つ【後編】/KUKA Japan 大田紘新社長インタビュー

日本は本当にライバルが多い

「ドイツの思想に基づく高付加価値なソリューションを」と話す大田紘社長

――日本市場の印象はいかがでしょう。  国際ロボット連盟(IFR)の統計では、世界のロボット生産台数のうち約6割を日本メーカーが占める。本当にライバルが多く、しかも各社が独自の価値を持っています。また、中国メーカーも安価な製品を武器に参入し始めている。その市場でKUKAができることはただ一つ。「ドイツの思想に基づく高付加価値なソリューションを提供する」ことだけです。 ――ここで言う高付加価値とは?  もちろん「品質のよい製品」が最も重要ですが、それだけではない。顧客に役立つソリューションを提案する。ブランドイメージやサービス体制も大切です。そのため過当な価格競争には応じません。ブランドへの信用やわが社の企業体力が下がってしまいますから。また、特に日本で色濃い気質ですが、顧客は購入前も購入後もその過程を大切にする。日本での商売を人生に例えると、「結婚」だと考えています。お互いが相手をどんな人か理解して契約する。そのあとも円満な家庭を築くことで、豊かな人生になるでしょう。

まずは、パートナーとの連携強化

昨年の国際ロボット展(iREX2019)の同社ブース。人だかりが絶えないほど注目を集めた。

――素敵な例えです。  ロボットは購入契約をしてから、実際に手元に届くまで3、4カ月かかる。その間、ずっと放置されたら顧客は当然不安になる。そこでこまめに進捗(しんちょく)を伝えることで、その後の信頼につながるでしょう。ただ、KUKA Japanは約20人の陣容です。わが社だけでは、とても足りない。そこで、商社や地場のシステムインテグレーター(SIer、エスアイアー)との連携は不可欠と考えています。まずは、そういったパートナーとの連携強化から着手したいです。 ――まずは連携強化すると。  同時にわが社の体制も強化します。ただ、やみくもには人材を採らない。量を確保するために質を下げては、「結婚相手」には選んでもらえないでしょう。求める役割に見合った人材を採用しながら、従業員全体の底上げも図っていきます。

近江商人の気概で

大田紘社長は「1歩ずつ、顧客やパートナーと共に成長していきたい」と意気込む

――最後に意気込みを。  KUKAには中国だけでなく、東南アジアなどにも有力な拠点があり、アジアを包括的にカバーしています。ですが、日本に単独で現地法人を置く意味とは? やはり、日本市場ならではの魅力と難しさがあるからだと解釈しています。また、その代表を命ぜられ、不安がないわけではないですが、ワクワクしています。 ――ワクワクですか。  江戸時代の三大商人の一つ、滋賀の近江商人は「三方よし」との言葉を残しました。「買い手よし、売り手よし、世間よし」。つまり、商いは自らの利益のみならず、買い手である顧客、さらに世の中にも良いものであるべき、との姿勢で周囲との信頼を築いた。KUKA Japanは設立から13年が経ち、国際ロボット展(iREX)でも注目していただけるなど、市場での知名度はそれなりにあると認識しています。では次は、やはり信頼の構築です。自社の良さの理解してもらい、顧客の要求に地道に応える以外に信頼強化の方法はありません。1歩ずつ、顧客やパートナーと共に成長していきたいです。

――終わり (聞き手・構成 ロボットダイジェスト編集部 西塚将喜)

<プロフィール> 大田紘(おおた・ひろし) 学歴:2001年3月京都外国語大学英米文学科卒業、10年9月関西学院大学経営戦略研究科修了。職歴:07年7月シェフラージャパン入社、12年2月シェフラータイに出向し、二輪車事業部門東南アジア地域セクターマネジャー。16年4月アトラスコプコ・ジャパン接合機器部営業部長、同J-OEM向けグローバルキーアカウントマネジャーを経て、20年7月から現職。石川県出身の43歳。 関連記事:日本ですべきことは、ただ一つ。たった一つ【前編】/KUKA Japan 大田紘新社長インタビュー

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