2020.06.17
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豊和がSIer事業参入、既存設備で自動化を/豊和工業

すでに認知度のあるメリット

 SIer事業の立ち上げに向けて動き始めたのは15年から。同社の新規事業調査室が調査を始め、同年に設立した「ロボット革命イニシアティブ協議会」に加盟した。自動化へのニーズの高まりと、工作機械を納める時にロボットを取り付けることがあり、全く新しい分野ではなかったことが、事業化を検討する理由だった。

「『今ある機械をここまで自動化できるのか』と驚いてもらえる提案をしたい」と渡辺健司取締役機械事業部長

 17年に事業化に向けたプロジェクトチームを発足すると、さっそく大手自動車部品メーカーからの引き合いがあった。  「新しく工作機械を導入する。加工ラインの自動化を任せたい」とのことで、自動変速機(オートマチック・トランスミッション)用オイルポンプ部品の加工ライン向け搬送システムを2ライン納入した。工作機械は他社製だったが、そのミッションメーカーとは以前から取引があり、すでに信頼関係も築けていたことで、システム構築の依頼につながった。  「自動車関連の企業には、わが社がどんな会社かを既に知ってもらえている。新しく事業を始めるには、すでに認知されていることは大きなメリット」と渡辺取締役。  昨年には機械事業部内に「SIerチーム」を編成し、正式に事業として取り組む。これまでは自動車部品加工向けの生産ラインが中心だったが、それ以外の分野にもSIerとして展開するため、さまざまなロボットを購入して使い方などを学ぶ。

ネットワークを作り全国へ

 SIerチームは大きく分けて①インライン検査システムや洗浄システムなど必要に応じて組み合わせる「搬送ソリューション」②制御システムを自社で設計、製作する「ソフトウエア開発」③ロボットを使った対象物の搬送などの「ロボットセットアップ」――の3つの柱からなる。  社外だけでなく自社内の自動化システムも手掛け、走行軸と産業用ロボットを組み合わせた搬送システムや、ロボットによる被加工材の着脱システム、専用工具を持たせた仕上げ加工などの実績がある。

「ネットワークを築くことで最適なサービスを提供する」と渡辺健司取締役機械事業部長

 ただし「自分たちだけでは、自社内の設備の自動化で手一杯」と渡辺取締役。そこで「ネットワークの構築に力を入れる」と話す。自社のSIerチームは全ての工程を担えるが、受注が増えた場合にはどうしても手が足りない。そのため、協力企業を増やして分業制にする仕組みを考える。  システム全体の設計を同社のSIerチームが担当し、その設計に応じて必要な要素機器やシステム構築を協力企業に任せる。「さまざまな企業とネットワークを築くことで、依頼主の場所や内容に応じ、最適な企業と作業を進められる」と渡辺取締役は構想を話す。「豊和というプラットフォーム(基盤)を作り、その中に人、企業を集めSIerとしての機能を果たしたい」と力を込める。  現状は依頼に応じて協力会社を探し、声を掛ける段階だ。これからは、どれだけネットワークを広げてこの仕組みを運用できるかが最も重要になる。

(ロボットダイジェスト編集部 渡部隆寛)

※この記事の再編集版は、設備財や工場自動化(ファクトリーオートメーション=FA)の専門誌「月刊生産財マーケティング」2020年5月号でもお読みいただけます。

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