[インタビュー]システムはSIerが作る/高丸工業 高丸正社長
SIerが多様なニーズに応える
新規ユーザーの中心が大企業から中小企業に移ったことで、われわれSIerにとっても、ロボット導入の提案の仕方が変わりました。大企業はサイクルタイム短縮や人員削減がコスト削減に直結するので、数値やデータに基づくアプローチが有効です。それに対し中小企業は、品種が多いので作業を正確に数値化するのが難しく、同じような提案はできません。 また、大手企業はニーズが明確なので自動化のアプローチの仕方は自然と定まりますが、中小企業は必ずしもそうではありません。困りごとをどう解決するか、具体的なイメージを持てないことがほとんどです。ロボットメーカー自身がシステム開発もできればいいのですが、ニーズがあまりに多様で大量なので、われわれのようなSIerが必要になると思います。
導入に踏み切る一歩をRTCで
わが社は、中小企業がロボット導入を検討できる場としてロボットテクニカルセンター(RTC)を2007年に開設しました。ロボットの販売代理店では特定のメーカーを扱うため、本当にマッチするロボットを提案できないことが多いのが問題でした。目指したのは、家電量販店のようにさまざまなメーカーの製品が並び、ニーズに合ったものを選べること。一般的な商品では当たり前のことが、できていなかった訳です。 RTCは本社内にあるRTC兵庫と東京都大田区にあるRTC東京の2カ所を展開しています。RTC兵庫にはテスト用のロボットを26台常設し、仮のジグと組み合わせて現場に近い形でシミュレーションできます。RTC東京にも15台以上常設しています。 テスト用ロボットを置くのは、ロボット導入を検討するお客さまに、実際にロボットで自動化できることを示すとともに、その品質まで確認していただくためです。ロボットで作業した場合の品質が分かれば、導入に踏み切りやすくなります。 さらに、RTCでは法律で定められた労働安全衛生特別教育やロボットの使用方法の講習なども実施しています。中小企業には自前でロボットを運用する技術者がいないことが多いですが、RTCではロボットの導入から運用まで、一貫して支援する体制を整えています。
(聞き手・松川裕希)
高丸 正(たかまる・ただし) 1983年近畿大学理工学部機械工学科卒業、高丸工業入社。1985年社長。2016年ロボットテクニカルセンター設立、同社社長を兼務。FA・ロボットシステムインタグレータ協会幹事。兵庫県出身。1960年生まれの59歳。 ※本記事の再編集版は、設備材やFAの専門誌「月刊生産財マーケティング」の2019年12月号でもお読みいただけます。