[新春インタビュー]ロボットは“つながる”ことで飛躍的に進化する【前編】/ファナック稲葉善治会長兼CEO
――「ロボットが人の仕事を奪う」と言う人もいます。 道具は常に、人の働く時間を短くし、仕事を楽にするために進化してきました。原始時代ではその日の食料を確保するだけで精一杯でしたが、道具の進化が余裕を生み出してきた。ロボットやAIが進化しても、この原則は変わらないと考えています。例えば、ロボットが進化すれば、人は今よりも長期休暇が取りやすくなるかもしれません。ロボットが普及した未来の社会では、週休3日が実現できる可能性もあります。また、女性や高齢者が生き生きと活躍できる社会を作るうえでもロボットの果たす役割は重要です。最近は安全柵なしで設置できる協働ロボットが開発され、人とロボットが同じ空間で一緒に働けるようになりました。工場ではまだまだ重筋作業(力の要る作業)が多いのが現状ですが、これを協働ロボットに任せられれば、女性や高齢者でも工程や部署を選ばず働けます。こんなに頼りになる相棒はいません。
つなぐことで何ができるか
――ロボットの進化は社会に有益ということですね。 さらにロボットを賢くしていくべきと考えています。人を単調な仕事から解放できれば、その労力を創造的な仕事に使えます。産業界にも働く人にも貢献できるのがロボットの大きな特徴です。ただ、ロボットがいくら進化しても、ソフトウエアの世界と違って短期間にがらりと何かが変わるようなことはありません。世界中の工場で稼働するロボットが順番に更新され、少しずつ変わっていきます。1、2年ではなく、10年、20年といった単位の時間が必要でしょう。 ――ファナックとしての今後の取り組みを教えてください。 ロボット単体での動作速度や精度などの改良も常に継続して行っていますが、当社もロボットに「考える力」を与える研究開発に注力しています。“つなげる”技術については、ロボットとロボット、ロボットと機械、さらにはロボットと人がうまく連携することが重要です。ファナックがここ数年力を入れてきた、製造業向けのIoTプラットフォーム「FIELD system」や、機械に組み合わせて即座に立ち上げられるロボットのパッケージシステム「QSSR」、「緑のロボット」と呼ばれる協働ロボットなどは、ロボットとロボット、ロボットと機械、ロボットと人をつなげるための取り組みと言えます。つなぐ手段は整いました。19年はつながることで何ができるのかを形にする年だと考えています。
――後編に続く (聞き手・編集長八角秀)
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