[SIerを訪ねてvol.24]SIerを支える「第三セクター」のSIer/ブイ・アール・テクノセンター
橋渡しの役目も
VRテクノセンターは出資者である自治体や金融機関の事業基盤や顧客ネットワークを生かし、ロボット導入を検討する企業とSIerの橋渡しをする役目も担う。食品、医薬品、化粧品の「三品産業」など、ロボットを一度も導入したことがない企業には、現場分析のコンサルティングサービスや自社に必要なロボットシステムの仕様をまとめた「提案依頼書」の作成支援サービスも提供する。「出資者のリソースを活用できるのは第三セクターならではの強み」と高橋統括課長は説明する。 実際、岐阜県内の食品メーカーとSIerのメカトロ・アソシエーツ(石川県小松市、酒井良明社長)を引き合わせ、菓子を詰める化粧箱の組み立てから箱詰め、箱閉めまでの一連の工程を自動化するロボットシステムを開発した実績もある。全体の構想設計はVRテクノセンターが、詳細設計や構築はメカトロ・アソシエーツがそれぞれ担当した。 「化粧箱は商品のラベルが印字されるため、段ボール箱と違って吸着しにくい。さらに途中で仕様も変わったため、ふたを閉める工程を自動化するのに非常に苦労した」と横山考弘取締役企画営業本部長は振り返る。苦心の末に、2020年4月にシステムが稼働した。 また、自動化相談からさらに範囲を広げ、生産現場全体の改善活動の相談にも応える体制も20年に整えた。顧客の相談内容をヒアリングしてロボットが必要だと判断した場合は、SI部に次の対応を任せる動線を作った。新型コロナウイルス禍の影響で一時的に活動がストップしたが、これから再始動する計画だという。横山取締役は「ものづくり全般で何か困り事があればわが社に任せてほしい」と強調する。
5社のSIerが5社のロボットで
ロボット導入を検討する企業とSIerを結び付ける場として機能するのが、17年に開設した「岐阜県ロボットSIセンター」だ。日本ロボット工業会の補助も含め、総事業費として6600万円を投じた。センターの開設を機に、ロボットの特別教育やティーチング(ロボットに動作を覚えさせること)などを指導する研修コースも18年度から開始し、SIerやロボットユーザーの育成にも本腰を入れ始めた。 センターには5台のロボットシステムに加え、搬送ロボットや巡回ロボット、独自開発の生産稼働状況管理システム「MARS(マーズ)」などが展示されている。5台のロボットシステムはボトルの組み立てやボトルの検査、ボトルの梱包、アルミ袋の検査、箱の組み立てと用途が異なり、しかも5社のSIerが5社のメーカーのロボットを使ってそれぞれのシステムを構築した。いずれのシステムも、今後のロボット普及が期待される三品産業での活用事例をイメージしたものだ。
センターは現在、本社があるテクノプラザ本館から少し離れた「岐阜県成長産業人材育成センター」にあるが、今年の夏をめどにテクノプラザ本館の4階に移転拡張する計画だ。 高橋統括課長は「コロナ禍以前は予約なしで自由に見学できる日を月1のペースで設けていた。今後はその頻度を増やすなどして、もっとセンターに気軽に立ち寄ってもらえるよう工夫したい」と話す。
(ロボットダイジェスト編集部 桑崎厚史)