「4つの戦略」で差別化狙う/バイナス 下間篤社長
「マーケットイン」の視点で開発
――3つ目の新しい実習装置の開発については? 文部科学省が「高等学校DX(デジタルトランスフォーメーション)加速化推進事業(DXハイスクール事業)」を展開しており、高校でのデジタル人材育成に力を入れています。わが社はこうしたニーズを踏まえ、ロボットの操作方法だけではなくプログラミングや人工知能(AI)も同時に学習できる新しい実習装置の開発を2年ほどかけて進めてきました。従来の教育機関向けの事業はどちらかと言えば製品ありきの「プロダクトアウト」の色合いが強かったのですが、今回の新しい実習装置はお客さまや社会のニーズを捉えた「マーケットイン」の視点で開発しました。現在は工業高校などへの営業アプローチを強化しており、来年度以降への拡販に向けた種まきを進めている最中です。
――4つ目の教育サービス事業はどうですか。 18年に第二工場内に教育センターを開設し、教育サービス事業に本格的に乗り出しました。従来は産業用ロボットの安全特別教育がメインでしたが、最近は新人エンジニアや経営層向けのセミナーを開始するなど、講習カリキュラムを充実させています。コロナ禍が落ち着いた今こそ教育サービス事業にも改めて本腰を入れ直し、SIer事業や教育機関向けの事業に続く第3の柱へと成長させたいです。 ――これら4つの戦略を推し進めるのですね。最後に現状の課題を教えてください。 やはり社内の技術者の育成でしょう。わが社が教育機関向けに制作した教材や実習装置ももちろん社員教育に活用できますが、結局はどれだけ現場で経験を積むかが重要です。特にSIerのビジネスには技術力やコミュニケーション能力、調整力などのさまざまなスキルが求められます。これらは一朝一夕には身に付きませんから、時間をかけて丁寧に人材を育てなければなりません。 ――ありがとうございました。
(聞き手・ロボットダイジェスト編集部 桑崎厚史)
下間篤(しもま・あつし) 2012年4月バイナス入社、17年3月取締役営業部長、22年7月取締役第2営業部長・資材部長。24年1月から現職。同年3月からは親会社CDSの取締役FAロボットソリューション事業本部長に就任。愛知県出身の58歳。