[SIerを訪ねてvol.12]人材派遣業から生まれた異色のSIer【前編】/アウトソーシングテクノロジー
SIerは「のり」
同社のSIerとしての強みは、ロボットや周辺機器などのメーカーと適度な距離感があること。顧客から課題をヒアリングし、「省人化したい」「人手不足で困っている」などの課題に応じた提案をする。メーカーとの距離感が近過ぎないため、ロボットありきでも機械化ありきでもなく、柔軟に対応できる。中には、一切機械化せずに課題解決する場合もあるほどだ。 新センター長はSIerの仕事について「SIerにもいろいろなレベルがあり、顧客のニーズを聞いてシステム全体を検討するSIerもいれば、ロボットは既に導入されている状態で組み合わせる搬送システムの設計だけを考えるSIerもいる。つまり、ロボットシステムの設計だけでなく、自動化された生産システムを設計し、その中でロボットを扱うこともある、という認識」と話す。 「だから、SIerを探そうとインターネットで検索しても情報は少なく、自分がSIerだと気付いていない人が結構いる。そうした埋もれているSIerに光を当て、世の中に出てきてもらいたい」と言う。 新センター長は、SIerのロボットを含むさまざまな機械を組み合わせる仕事をのりに例える。「のりは接着すると分からなくなる。だから注目されない。でも、のりがないと個々の機械がばらばらでまとまらない。のりはもっと主張していいし、もっと対価を得ていいのではないか。技術に自信を持って、世の中にアピールすべき」と力を込める。
SIerのネットワークを作りたい
新センター長は同社を核としてSIerのネットワーク化を構想する。ロボット導入.comや関西開発センターのSIer事業、同社の本業である人材派遣業など、あらゆる方法で埋もれているSIerを発掘し、「仕事やノウハウを共有し、協業できるネットワークを作りたい。国内だけでなく、海外でネットワークを作れたら事業の可能性が広がる」と話す。 関西開発センターの若手エンジニアには、そんな新センター長のビジョンに共感して集まった人も多い。インド出身のニキル・タンブルカーさんは大学卒業後の18年に来日し入社。関西開発センターでPLCのプログラミングをする。「日本で経験を積み、技術を生かしてインドで起業するのが将来の夢」と話す。 SIerネットワークの構想では、企業なのか技術者個人なのかは問わない。「いざ仕事を受けるとなると、口座開設の可否など個人レベルでは問題がある。そんな時にはアウトソーシングテクノロジーが間に立って仲介することもできる。かといって、必ずしも私たちを通して契約しなければならない訳ではない」と語り、「埋もれていたSIerが仕事をして対価や評価を得て、それを継続できれば、いずれはわが社と協業する機会もあるだろうし、困った時には助け合える」と言う。
――後編に続く (ロボットダイジェスト編集部 松川裕希)