[特集 国際ロボット展vol.15]ロボットの可能性を広げる関連技術や周辺機器
多用な着眼点で進化する真空ハンド
ドイツの真空機器メーカー、シュマルツ(日本法人=横浜市都筑区、アーネ・ゲッテゲンス社長)は、顧客の把持したい対象物に応じて形状を自在に設定できる、真空ハンドのフルオーダーシステムの試験運用を始めた。国内では21年3月までに提供を開始する。 専用ウェブサイトから、把持物の設計データを登録し、材質や重さなどを設定する。すると、最適な位置に吸気口を設けた真空ハンドの設計データが作成される。ハンドの形状が決まったら3Dプリンターで製作する。 アーネ社長は「真空ハンドが能力を発揮するには、吸着口を適切な位置に設計することが最も重要。こうしたシステムがあれば、導入は飛躍的に進む」と見通す。 真空機器メーカーの妙徳(東京都大田区、伊勢幸治社長)は、真空ハンドの新製品「バルーンハンドSGB-10」を展示した他、真空発生器の新製品「NEO CONVUM(ネオコンバム)」を参考出品した。20年中の発売を予定する。ネオコンバムの開発コンセプトは「見せる機器部品」。真空発生器は外部から見えるロボットアームなどに取り付けられることが多い。そこでデザイン性に優れた製品を開発した。モノのインターネット(IoT)対応のため、各種センサーも搭載する。 国松孝行営業部長は「真空発生器の次世代の姿を見せたい」と意気込む。
ハンドの機能を拡張
ロボットハンドやハンドチェンジャーなどを製造する コスメック(神戸市西区、白川務社長)は、固定した台(パレット)ごと被加工材を交換できる工作機械用の「パレットチェンジャー」を新発売した。工作機械の被加工材をロボットで自動交換するシステムに必要な機器を、同社の製品だけでそろえられる。「これまでパレットチェンジャーは欧州メーカー製しかなく、わが社の製品でそろえたいとの声が国内で多かった」と担当者は開発の意図を語る。 また、コスメックにセンサーを供給するアサ電子工業(東京都小平市、麻健社長)も出展。シリンダーのロッドの位置などを検出する「高精度シリンダセンサー」をアピールした。このセンサーは0.1mmの位置ずれも認識できるため、ハンドチェンジャーの接続部のロックの検出に使うことが多いが、ハンドに組み込む利用法も紹介。つかむだけで対象物のサイズが規定内に収まっているかを確認できると提案した。 手袋メーカーの東和コーポレーション(福岡県久留米市、渡辺聡社長)は、ロボットハンド用のゴム手袋「ロボグローブ」をアピールした。ロボットハンドを油や水から保護するだけではなく、独自の滑り止め加工を施した素材を使いグリップ力も高めた。広報担当者は「長年の手袋製造で培ったノウハウをロボットハンドに生かした。顧客のニーズに合わせ、カスタマイズした製品を提供する」と強調する。この他、ロボット本体を保護するカバーも展示した。 鍋屋バイテック(NBK、岐阜県関市、岡本友二郎社長)は今回展を機に、ソフトウエア企業と連携した。CADソフトなどを扱うクリエイティブマシン(宮崎市、芳賀卓也社長)と連携。クリエイティブマシンが国内に提供する、CADソフトがベースのロボット向け3次元シミュレーションソフト「icROBOSim(アイシーロボシム)」に、NBK製のロボットハンドの情報が標準登録された。ハンドの構造やサイズなどを入力する手間が省ける。 アイシーロボシムは、米国のソフトメーカー、アイアンキャドの3次元CADソフト「IRONCAD (アイアンキャド)」上で稼働する。3次元CADソフトを扱える人ならば、アイシーロボシムも簡単に使えるという。