ロボット用ソフトで働き方を革新――浜松発スタートアップが目指す未来【後編】/リンクウィズ村松弘隆取締役
職人の技術を再現
――御社の製品などを通じて、実現したいビジョンは何でしょうか。 前編でも申しましたが、当社は「人の業(わざ)を受け継ぐロボティクスで働き方を革新する」とのミッションを掲げています。ロボットは良くも悪くも決まった通りにしか動きませんが、当社は職人の技術をいかにロボットに取り込むかを模索しています。そして、職人の技術をロボットが再現することで、これまでの働き方を変えていきます。 ――それを実現するのが冒頭の2つの製品ですね。 そうです。ですが、それだけでは当社が目指すビジョンを達成できません。今後はモノのインターネット(IoT)や人工知能(AI)の技術を生かし、ティーチングなどのロボット関連のデータだけではなく溶接条件のデータも組み合わせ、職人と同じ動きをロボットで再現したい。しかし、きれいに溶接ができるためにはどういう条件が必要か――というデータは当社の手元にはありません。
まずはデータベースを構築
――となると、まずは溶接条件のデータを集める必要がありますね。 溶接した時のワーク(被加工物を意味するワークピースの略)の形状変化をデータとして可視化するシステム「LINKWIZ FACTORY CLOUD(リンクウィズ・ファクトリー・クラウド)」を現在開発しています。今年1月に東京都江東区の東京ビッグサイトで開かれた展示会「スマート工場EXPO」で参考出品しました。このシステムは、L-QUALIFYやL-ROBOTが収集したデータをサーバーに蓄積し、パソコンやタブレット端末などのモニターに表示します。複数のテストユーザーと協力しながら、まずは溶接時のデータを集めてデータベースをしっかりと構築したいですね。 ――データ収集への取り組みも着々と進めているのですね。 データを集めたら、今度はそのデータを活用して職人と同じ動きをロボットで再現したい。それにはAIの技術が必要になるでしょう。もしこれが実現できれば、ティーチングから高品質な溶接までの一連の作業が、ロボットを使って誰でもできるようになります。そうすれば、これまで3K(きつい・汚い・危険)とされてきた溶接工場での働き方も将来、大きく変わるようになるでしょう。そこまで実現するのが当社の使命です。
課題は情報発信
――ビジョンの実現にあたり、課題は何でしょうか。 最初のステップであるデータベースの構築が非常に難しいです。溶接条件のデータを集めることがなかなか大変で、まだまだ時間がかかりそうですね。また、当社のビジョンや製品、技術をもっと外部に発信する必要があります。当社の取り組みは、時間をかけて説明しないとなかなか相手に伝わりません。情報発信のコンテンツが不足しているのも大きな課題です。 ――確かに情報発信は重要です。ありがとうございました。 やることは多いですが、「新しい時代を自分たちで作るんだ」との気概を持って今後もビジネスにまい進します。ありがとうございました。
――終わり (ロボットダイジェスト編集部)
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