[SIerを訪ねてvol.5]人とロボットの協調目指して【前編】/IDECファクトリーソリューションズ
大事なのは受注前の工程
ショールームの展示製品のラインアップを見ても分かるように、IDECファクトリーソリューションズのSIerとしての最大の特徴は、協働ロボットに特化している点だ。 ロボットSIerの事業に本格的に取り組み始めた14年以来、協働ロボットを軸に、システムの設計からアフターサービスまでを一貫して担い続ける。 ロボットシステムは通常、仕様決めから設計、プログラム作成、組み立て、調整、据え付けなどの多数の工程を経て構築される。これは協働ロボットも一般的なの多関節ロボットも一緒だ。 鈴木取締役は「当社が一番大事にしているのは受注前の工程で、ロボットシステムの仕様を決めるのに多くの時間を割く。顧客との認識合わせや合意形成が最も難しい」と語る。「顧客の要望の中で、できることとできないことをきちんと検証して、理解してもらうことが重要。ビジョンセンサーやハンドなどの要素技術もしっかり検証しなければならない」とも述べる。
協働ロボットは安全柵なしで人と協働作業ができることから、近年注目度が急速に高まる。食品産業や医薬品産業、化粧品産業の“三品産業”など、これまで産業用ロボットの活用が進んでこなかった産業向けの自動化ソリューションとしても期待される。 それだけに同社にも、ロボットを使ったことがない企業から相談が舞い込むことが多い。ロボットのことを深く知らない企業を相手にする機会も多い分、仕様などに関する合意形成をより丁寧に実施する必要がある。 「食品産業の顧客などからは『人の作業を完全に協働ロボットで代替できるか』との相談を受けることがあるが、現状の技術ではそれは難しい」と鈴木取締役。「人にしかできない作業と、ロボットができる作業を上手く組み合わせて生産性を高めるのが協働ロボットの有効な使い方。その辺を当社でいかにきちんと説明するか、そしていかに顧客に理解してもらうかが大事」と話す。
ユニークな海外製品も有効活用
もう一つ、意識して取り組むのは「システム構築に時間をかけ過ぎないこと」(鈴木取締役)だ。 同社は全体で168人の従業員が在籍するが、ロボット事業に携わるのは12人しかいない。限られた人員で少しでも多くの案件に対応するには、効率的な協働ロボットシステムの構築が求められるのは言うまでもない。 その一環として、ビジョンセンサーやハンドなどロボットシステムを構成する要素部品や周辺機器には、海外メーカーのユニークな製品を積極的に活用する。海外メーカーまで視野を広げれば、既製品の組み合わせで対応できる領域は広い。 例えばハンドは、顧客ニーズに合わせて一品一様で製作すると時間もコストもかかる。そのため、同社は一からハンドを設計製作するのではなく、中国のハンドメーカーなどの購入品を使う。また、ビジョンセンサーでもベルギーの企業などと販売代理店契約を結び、自社のロボットシステムの構築に生かすという。 また、17年10月には、協働ロボットシステムを構成する要素技術やプログラム、ロボット本体などを一つにまとめたパッケージ製品の提供も始めた。同社はシステム構築の手間を軽減でき、顧客は簡単に自動化システムを導入できるため、双方にメリットがある。 現在は「コンベヤトラッキングシステム」「ばら積みピッキングシステム」などの5つのパッケージ製品を用意する。「パッケージ製品に興味を持つ企業も多いが、まだ訴求が足りない。パッケージ製品には、顧客がロボットの使い方をイメージしやすくなるという利点もあるので、今後もしっかり拡販したい」と鈴木取締役は意気込む。
ここまでは同社のSIerとしての特徴や強みを紹介した。だが、一般的な産業用ロボットを取り扱うSIerが多い中で、そもそも同社はなぜ、あえて協働ロボットに特化したのだろうか? 後編では、同社の沿革を交えながらその理由を探る。そして、SIerとしての実績や今後の展望もリポートする。
――後編につづく (ロボットダイジェスト編集部 桑崎厚史)
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