2018.10.15
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[創刊特別対談]石井孝裕ロボット政策室長×久保田和雄SIer協会会長【後編】

ロボットの“サービス化”で差を付ける

「中国やタイなどの技術水準の把握は重要」と久保田会長

司会 ロボット産業で日本は世界のトップを走ってきましたが、近年では中国など海外の存在感も高まっています。 久保田 先日、中国で開かれたロボット専門の展示会を見てきました。ロボットのハードウエアは減速機やモーターを購入すれば難しくなく、ソフトウエアはほんの数年前まで大したことないレベルでしたが、急速にレベルが上がり「ここまで来たか」と感心しました。まだ日本のような高度なシステムインテグレーションまではできませんが、日本が今ナンバーワンだからと言って油断すると、足元をすくわれかねません。昨年、中国やタイでもSIerの協会が発足したと聞きます。そうした現地の団体と交流し、技術水準などを常に把握していかなければならないと思います。

「稼働中にいかにして新たな価値を生み出すかが重要」と石井室長

石井 数十年前とは違って、国外メーカーも出てきている中で、市場全体に占める日本のシェアが相対的に下がるのはある程度仕方ありません。ではどこで勝負するか。「製造業のサービス化」などとよく言われますが、ロボットシステムを作って終わりではなく、稼働中にいかにして新たな価値を生み出していけるかが重要で、それを担えるのはSIerです。良いロボットがあるからSIerは高度なシステムを作ることができて、高度なシステムに組み込まれるからこそロボットの性能が生きる。SIerとロボットメーカーは互いに付加価値を高め合う関係だと考えています。 久保田 ロボットメーカーを中心とする日本ロボット工業会とわれわれSIer協会は、言わば車の両輪です。国内ではロボットメーカーの協力会社として特定メーカーのロボットだけを扱うSIerも多いですが、欧州でSIerは独自の存在感を持ちます。日本でも車の両輪として、一定の独立性は保ちながらも同じ方向を向いて進んでいければと思います。具体的な話はこれからですが、産業用ロボットを“Easy to use”、つまり使いやすくするための働きかけなども日本ロボット工業会にしていければと考えています。操作方法などは各社の強みの源泉でもあるため、競争領域と協調領域の判断は難しいとは思いますが。 石井 競争領域と協調領域の切り分けは簡単ではないですが、時間軸で考えるのも一案ではないかと思います。1~2年後など近い将来のことでは競争し、10~20年後といった遠い将来に向けて協調するというのが一つの在り方かと思います。

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