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2021.02.26

[特集 物流機器は新世代へvol.5]新トレンドは省スペース、パレ・デパレの新製品続々

物流分野で、産業用ロボットの活躍が最も期待されるのがパレタイズ・デパレタイズだろう。パレット(荷役台)などに荷物を積み下ろしする作業だ。近年多くの企業がパレタイズ・デパレタイズ向けのシステムを開発し、展示会などで盛んに発表する。箱を持ち上げて、別の場所に下ろすだけの作業だが、各社工夫を凝らし独自の付加価値を提案する。

箱の事前登録なしで混載に対応

 パレタイズ・デパレタイズシステムは、コンベヤーなどの搬送装置と、パレットやカゴ車などの間をつなぐ装置だ。パレタイズではコンベヤーを流れてきた荷物をパレットなどに積み付ける。デパレタイズはその逆に、パレットなどに積まれた荷物を一つ一つコンベヤー上に下ろす。

 最も一般的なのは、大型の垂直多関節ロボットを使ったシステムだ。多数の吸盤を付けた真空ハンドで箱の上面を吸い付けて持ち上げる。
 箱のサイズや積み付けパターンが一定の単載ならロボットに動作を覚えさせるティーチングも難しくないが、物流現場ではさまざまな箱を一つのパレットやカゴ車に積み付ける混載も多く、課題となっていた。しかし近年、ビジョンセンサーや人工知能(AI)技術などを使って混載にも柔軟に対応するシステムが提案されている。

カインズに納入したムジンの高積み対応システム

 パレタイズシステムのロボット化を推進する企業の一つが、Mujin(ムジン、東京都江東区、滝野一征最高経営責任者<CEO>)だ。同社は2021年2月22日に社名を従来のMUJINから改称した。
 扱う箱の事前登録が不要で、独自の3次元(D)ビジョンセンサーなどを駆使して箱の情報を把握。箱の種類ごとに情報を自動で学習して進化するシステムを構築できる。

 さまざまな業界にパレタイズ・デパレタイズシステムを収めた実績があり、2月9日にはホームセンターのカインズ(埼玉県本庄市、高家正行社長)の倉庫に納入した、高さ2.3mまで積める高積み対応システムの稼働開始を発表した。

キョートロボティクスは20年の「ロジスティクス大賞」を受賞

 ロボット用ビジョンセンサーなどを開発するKyoto Robotics(キョートロボティクス、滋賀県草津市、徐剛社長)も、パレタイズ・デパレタイズ用の知能化ロボットシステムを販売する。

 同社は20年9月1日、日本ロジスティクスシステム協会(会長・遠藤信博NEC会長)が主催する「ロジスティクス大賞」を受賞した。納入先である日用品卸売業のPALTACとの共同受賞だ。積まれた箱の荷下ろしをするデパレタイズ用のロボットシステムで、箱のデータの事前登録が不要。持ち上げる際に、箱のサイズと重量のデータを取得、その情報をトラックの配車などの後工程に活用できる。

協働ロボットを使ったシステムも

 安全柵なしで稼働させられる協働ロボットでパレタイズ・デパレタイズシステムを提案する企業もある。最大可搬質量は小さくなり、動作速度も通常の産業用ロボットにかなわないが、省スペースで設置できる。

 デンマークに本社を置くユニバーサルロボット(UR、日本支社=東京都港区、山根剛代表)は2月8日~19日、周辺機器メーカーやシステムインテグレーター(SIer、エスアイアー)23社とともにバーチャル展示会「THE COBOT EXPO JAPAN 2021 WINTER(ザ・コボット・エキスポ・ジャパン2021ウィンター)」を開催。ロボットハンドなどを製造するカナダのメーカーRobotiq(ロボティーク)と共同で、ロボティークが開発したパレタイズ用のパッケージシステムを動画で紹介した。最大可搬質量10kgのUR製ロボットと、上下の昇降軸を組み合わせたシステムだ。

 台湾の協働ロボットメーカー、達明機器人(テックマン・ロボット)も、パッケージ化したパレタイズ・デパレタイズ用システムを提案する。同社のロボットにはビジョンシステムが標準搭載されるが、それだけでなく真空ハンドやロボット本体の高さを変える昇降機構、専用のソフトウエアなどをセットにしたシステムだ。19年末の国際ロボット展で実機を披露した。

 SIerが協働ロボットのパレタイズシステムを提案する例もある。
 コンベヤーなどの搬送装置メーカーでロボットシステムの開発も手掛けるJRC(大阪市西区、浜口稔社長)は20年10月7日、大阪市で開かれた展示会で「ロボットパレタイズシステム」を発表した。段ボールのサイズを入力し、積み付けパターンを選択するだけでパレタイズができる。協働ロボットに加え、ロボットハンドや段ボールを認識するビジョンセンサー、安全装置など一連の設備をパッケージ化した。

  • UR製ロボットを使ったロボティークのパッケージシステム

  • 台湾メーカーのテックマン・ロボットもパレタイズシステムを開発

  • 大阪の展示会で披露したJRCの「ロボットパレタイズシステム」

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