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2019.11.25

連載

[注目製品PickUp!vol.20]価格そのまま、性能アップ! スカラロボの旗艦製品【前編】/ヤマハ発動機「YK400XE」

ロボットダイジェスト編集部が注目したロボット関連の製品を取り上げる連載企画「注目製品PickUp!」もとうとう20回目を迎えた。今回は、ヤマハ発動機が2019年9月に発売したスカラロボット「YK400XE」を紹介する。従来機種から最大可搬質量を1.4倍にし、標準サイクルタイムも約10%短縮したが、価格は79万8000円と同額に据え置いた。低価格を維持しながらも、性能強化を実現できた工夫とは?

アーム長400mmクラスが主力

 ヤマハ発動機はバイクやスクーターをはじめとした二輪車製品やボート、電動アシスト自転車、ポータブル発電機など、多種多様な事業を展開する。

 一般向けには二輪車のイメージが強いが、実は産業用ロボットメーカーでもある。
 スカラロボットを1976年に自社の二輪車生産ラインに導入したのが始まりで、現在はスカラロボットをはじめ、垂直多関節ロボットや直交ロボット、単軸ロボット、リニアモーター駆動の搬送システム「リニアコンベヤモジュール」、コントローラーなど、幅広い製品をそろえる。

 多岐にわたるロボット製品の中でも、今回の「注目製品PickUp!」では2019年9月に発売したスカラロボット「YK400XE」を紹介する。
 YK400XEはアーム長が400mmクラスのスカラロボットだ。ロボティクス事業部FA統括部の福川義章営業部長は「わが社のスカラロボットのアーム長は120mmから1200mmまであるが、400mmクラスのアーム長の製品が主力で最も売れている」と強調する。

最大可搬質量を1.4倍に

  • スカラロボット「YK400XE」

  • 14年に発売した従来機種「YK400XR」

 YK400XE(左上)は、14年に発売した「YK400XR」(右上)の後継機種。
 従来機種に数多くの改良を加えて性能強化を図った。特に大きな改良点は①最大可搬質量の向上②標準サイクルタイムの短縮――の2つだ。

 従来機種は最大可搬質量が3kgだったが、YK400XEではアームの構造や駆動部分を見直し、約1.4倍の4kgに高めた。従来機種では対応できなかった重さの物も搬送でき、用途がより広がった。

 福川営業部長は「顧客から『もう少し可搬質量を高めてほしい』との要望があり、最大可搬質量を4kgに高めても耐久性や精度、振動などの問題をちゃんとクリアできるかどうかをわが社で再検証した」と話す。

標準サイクルタイムを0.41秒に

俊敏な動作が特徴(写真はメカトロテックジャパン2019)

 標準サイクルタイムも従来比で約10%短縮。2kgの物を持ちながら、水平方向に300mm、垂直方向に25mm往復させた際の標準サイクルタイムは、従来機種では0.45秒だったが、YK400XEでは0.41秒を実現した。

 標準サイクルタイムを短縮するため、付属のロボットコントローラー「RCX340」を改良した。福川営業部長は「ロボットを動かすための制御パラメーターを見直した」と説明する。
 また、同社のコントローラーには、ロボットを動かすのに必要なモーターの出力などの最適値があらかじめ登録されており、可搬質量を「1kg」と設定すると1kgの負荷がかかった状態のロボットを最適に動かすように制御をかける。従来機種ではその可搬質量の設定が1kg刻みだった。つまり、ロボットが1.5kgの物を持つ場合でも、コントローラーは「2kg」の負荷がかかった状態のロボットを最適に動かすように制御していた。
 一方、YK400XE用に改良したコントローラーでは、可搬質量の設定を0.5kg刻みとした。細かな調整ができるため、搬送物の重さに合わせてロボットの動作をより最適化しやすくした。

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