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2019.10.02

連載

[ロボットが活躍する現場vol.8]自動車産業の変化を見据え、汎用的なラインを構築/テラダイ(1/3)

産業用ロボットを導入した現場をリポートする連載「ロボットが活躍する現場」。今回は埼玉県入間市にあるテラダイ(寺園智樹社長)を訪ねた。ダイカストと呼ばれる金属の成形加工が得意な同社。2017年、検査工程までを含めた無人化を目指し、自動車部品の生産ラインで新たなロボットシステムを導入した。今のところ、全てが計画通りとはいかないが、「自動車産業の変化に備えて、汎用性の高いシステムを導入した」と将来を見据える。

ダイカストによる自動車部品が得意

テラダイの外観

 今回取材したテラダイは、金属部品のメーカーだ。溶かした金属を金型に流しこみ、専用機で圧力をかけながら成形するダイカストと呼ばれる鋳造加工を得意とする。自動車産業を中心に、幅広い業界に取引先を持ち、独自の製法など高い技術力で評価されている。

 同社は2017年に導入したロボットシステムで、自動車のエンジン部品を生産する。従来は1ラインを1人で担当していたが、ロボットシステムにより2ラインを1人で担当できるようになった。今後は生産だけでなく、検査の作業も自動化する計画だ。
 省人化で生産コストの引き下げを狙う。生産するのはエンジン内でエンジンチェーンの張力を調整する「テンショナー」という部品で、大きさは50mm角ほど。自動車の小型部品は、海外とのコスト競争が激しく、単価が下がる一方という。そこで省人化を図り、人件費の削減を目指した。

「ロボットが働きやすい」環境に

新たな生産ラインの特徴を語る寺園智樹社長

 工程は主に①炉で金属を溶かす②ダイカストマシンで成形する③トリミングプレス機で余分な部分を取り除く④ショットブラストでひだ状の不要部分(鋳バリ)を除去する⑤検査――の5つに分かれる。
 大半の作業を専用機が担うが、機械間の搬送や機械への加工物の設置には人手が要る。従来は①と②の工程までを自動化していたが、17年導入のロボットシステムにより⑤の検査の直前まで自動化した。トリミングプレス機やショットブラスト機への加工物の設置やその間の搬送などをロボットやコンベヤーが担う。

 ロボットの導入にあたり、作業フローを見直した。例えば、部品の種類分けのタイミングだ。
 一つの金型、一度の成形で、つながったままの4つのテンショナーが得られる。それを、トリミングプレスの工程で、一つ一つに切り離す。その4つの形状はそれぞれ微妙に異なるため、従来はトリミングプレス機の下にスロープ状の受け取り機構を4つ設け、テンショナーを成形位置ごとに分けて管理していた。

 次工程のショットブラスト機へは50個ほどのテンショナーを一度に投入する。従来だと成形を50回繰り返し、各位置で成形されたテンショナーをそれぞれ50個そろえてから、ショットブラストを4回実施していた。それでは部品が集まるまでに時間がかかるうえ、ショットブラスト機の稼働のタイミングが一度に集中する。
 ロボットを導入するからには、ラインを常に稼働し続ける形が望ましい。そこでトリミングプレスの段階では部品を成形位置ごとに分けずに、ショットブラスト機に投入。ショットブラスト後に成形位置ごとに分ける流れにした。それに伴い、従来とは異なる構造のトリミングプレス機も新たに導入した。

  • 従来のトリミングプレス機。地面と垂直に機構が稼働する。

  • 新ラインの横形トリミングプレス機。地面と平行に稼働する。ロボットが加工物を設置する

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