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2019.09.09

製造業にとってAIは必然【前編】/武蔵精密工業

ギアなどの自動車部品を製造する武蔵精密工業は今年、人工知能(AI)システムの外販に乗り出す。自社設備として研究開発してきたAI外観検査システムなどを販売する。「製造業がAIを取り入れるのは必然。今のパソコンのように、10年後にはどの企業も当たり前に使うものとなる」と大塚浩史社長は言う。

自動化からAIへ

自社でロボットシステムなども構築できる

 武蔵精密工業は徹底した内製化が強みの自動車部品メーカーだ。鍛造や機械加工、熱処理などあらゆる設備をそろえ、加工条件なども独自に研究する。

 工場の自動化も自社でしており、工機部門は産業用ロボットを使ったシステムなども構築できる。
 10年前から本格的に自動化に取り組み、加工や組み立てなど大半の工程は自動化できた。

「自動化が進むと必然的にAIが必要になる」と大塚社長

 しかし、どうしても自動化が難しい工程があった。
 その一つが外観検査で、「熟練検査員は50μmの傷を2秒で発見できる。これはすごいことで、どうやっても自動化できなかった。こうした『最後に残った困りごと』を解決するため、2年前に必然的にAI研究に乗り出した」と大塚社長は話す。

AI人材は社内にいた

エヌビディアのGPUを生産設備に組み込みやすいようボックス化したもの(外販用)

 AIを研究するには担当者が必要だ。まずは社内公募のような形で、社内にAI人材がいないかを探した。すると、趣味でAIに適した米国NVIDIA(エヌビディア)のGPUと呼ばれる演算装置を買い、AIで最もよく使われるプログラミング言語Python(パイソン)でAIプログラムを作成している社員が2人見つかった。

 まずはこの2人のAIエンジニアと設備製作の知見があるプロジェクトリーダーの計3人でプロジェクトをはじめ、外部の研修会なども活用しながらAI人材を増やした。今では10数人がこのチームに所属する。
 「もともと趣味でAIプログラムを作るようなメンバーたちなので、水を得た魚のように生き生きと働いている」と大塚社長は話す。

AI企業との合弁会社も

 最初は自社の困りごと解決のために研究を始めたが、「細かい事情は各社で違っても、大きな枠組みで見れば『製造業の困りごと』は共通している。わが社と同様に、今後はあらゆる製造企業が必然的にAIを求めるようになる」と大塚社長は考えた。

今年の4月にムサシAIの設立を発表

 そこで同社は今年、AIシステムの外販に乗り出す。イスラエルのAIベンチャー企業シックスアイ・インタラクティブと合弁会社Musashi(ムサシ)AIを設立し、開発体制を強化。
 愛知県豊橋市の武蔵精密工業本社内とイスラエルに研究拠点を設置し、AIを使った製品の販売を目指す。

 ここまでは武蔵精密工業がAI事業に進出した経緯や、研究開発の体制などを紹介した。後編ではいよいよ、同社が開発を進める、AI技術を応用した製品や、AIを使った製造現場の自動化方法などを紹介する。

――後編へ続く
(編集デスク 曽根勇也)


※この記事の再編集版は「月刊生産財マーケティング」2019年9月号でもお読みいただけます。

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