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2019.04.10

グリッパーのブランド確立を目指す【前編】/北川鉄工所

旋盤(回転する加工物に刃物を押し当てて加工する工作機械)に用いる周辺機器をはじめ、鋳物部品や建設機械、立体駐車場などを事業の柱とする北川鉄工所。工作機器部門のキタガワ・グローバル・ハンド・カンパニーが新たな事業としてブランド確立に注力するのが、ロボットハンド(グリッパー)だ。「Promano(プロマノ)」と名付けたブランドで、ロボット業界に進出する。

2017年にグッドデザイン賞受賞

さまざまなサイズをラインアップするNTSシリーズ

 北川鉄工所は2017年11月にグッドデザイン賞を受賞した。対象製品は「プロマノ」ブランドのグリッパー「NTS」シリーズ。17年にデザインを刷新し、同社のコーポレートカラーである青と、機能性を重視した洗練された形状を採用した。特に、メタリックでありながら深みも感じさせる青にはこだわった。設計に携わった技術部技術1課の大塚誠課長は「機能と満足のいく発色や質感を両立させることが難しく、何度も試作を繰り返した」と話す。

 NTSシリーズだけでなく、プロマノブランドの多くの製品は順次同様のリニューアルをしている。どの製品も従来製品よりも薄く、軽くなった。NTSシリーズでは最大10%薄くなり、最大30%軽量化した。グリッパーとしては薄く軽いことは、大きな武器になる。狭いスペースでも品物をつかんで取り回ししやすく、グリッパーが軽くなった分だけロボットの可搬質量に余裕ができるため、重い品物をハンドリングできるからだ。

 同社はチャック(旋盤で加工する棒材の一端を把持する機器)のトップメーカーの一つだが、プロマノブランドの知名度はまだ高いとは言えない。従来、展示会ではプロマノのブランド浸透のため、あえて北川鉄工所の名前を出さずに出展していたが、思うように宣伝できなかった。そこで「今年1月に出展した第3回ロボデックスでは、北川鉄工所のロゴを添えたところ、明らかに集客力が上がった」と藤本一キタガワ・グローバル・ハンド・カンパニー社長は話す。一朝一夕ではブランドを確立できないということだ。藤本社長は「現時点では売り上げは微々たるもの。これから本格的に拡販に努める」と語る。

新部署「自動化システムチーム」を立ち上げ

藤本社長は「自動化システムチームに期待している」と語る

 ブランド確立を推進するため、今年4月には営業部の下部組織として自動化システムチームを発足させた。自動化システムチームには、製造や技術、営業など部署を横断して6人が参加する。

 自動化システムチームが担う責任は大きい。市場調査から販売活動まで幅広く行い、少数精鋭で事業戦略の決定を主導する。その中には、ロボットメーカーやシステムインテグレーター(SIer)とのアライアンス(協力体制)構築、商品企画、効果的な販売方法の立案も含まれる。

 藤本社長は「チャックや工作機械用の円テーブルは単体での販売が多いが、グリッパーはロボットに組み込まれてシステムとして機能しなければならない。今後は、ロボットメーカーやSIerとの協業がより重要性を増すだろう」と指摘する。

チャックメーカーが作るグリッパー

「デザインだけでなく構造面でも刷新した」と話す大塚課長

 旋盤では丸い棒状の金属を加工するので、ワーク(加工や搬送の対象物)のつかみ方やつかむ力の大きさが生産性に大きく影響する。それゆえ、同社は物を“つかむ”ことに関して多大なノウハウを蓄積してきた。藤本社長は「チャックは加工液がかかったり、金属の切りくずが衝突するなど、過酷な環境で使われる。耐水性や耐久性が求められる環境で培われたノウハウをフィードバックしている」と語る。
 実際にフィードバックできるノウハウは、薄く、軽くする設計、材質改善、表面処理など多岐にわたる。NTSシリーズの鮮やかな青の発色も、アルマイト処理を含む表面処理の成果だ。

第29回日本国際工作機械見本市(JIMTOF2018)でもグリッパーをPRした(北川鉄工所提供)

 そして同社は、チャックで培ったノウハウを、新たな付加価値を備えた製品の開発にも生かす。開発の方向性は「搬送+α」だ。
 昨今の人手不足解消と生産性向上のニーズに応えるには、ロボットとてただ運んでいればいい訳ではない。「運ぶ間にも他の工程を組み込めたら、いろいろな可能性が広がる」と藤本社長は話す。その「搬送+α」を実現した新製品を今年度中には発売する予定で、技術部で最終調整を進めているという。
 それは一体どのような製品なのか。後編では開発中の2つの製品について話を聞いた。

――続く

(ロボットダイジェスト編集部 松川裕希)



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(4月11日アップ予定)

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