[ロボットが活躍する現場vol.16]中小で塗装ロボットを使いこなす驚きの着眼点/久保井塗装
最適なIoTを自社開発
同社は各種補助金を受けて18年にKCW-CMSを開発し、翌年に外部販売を始めた。作業要領などの管理から、受注管理、作業者への生産作業の割り振り、塗料の調合管理と記録、塗料と被塗物の残量管理、完成品の検査結果、出荷管理までの工場業務のデータを集約できる。 「塗装は耐久性のある消費財の耐用年数を飛躍的に延ばす役目を果たしており、また塗料は揮発性有機化合物や有害物質を含む。塗料の無駄や不良品を可能な限り減らすのが塗装事業者の責務。その最適化を目指しIoTシステムの導入を考えた。塗装管理に最適なシステムがなかったので自社で独自に開発した」(窪井社長)。
適切な調合量だけでなく、抜け漏れも防ぐ
塗料の調合では、主剤やシンナー、硬化剤などの調合比率を事前に設定すると、調合用のポットに投入した主剤の量に応じてシンナーや硬化剤の最適量を自動計算する。 電子はかりと連動しており、適正量になると注ぐのをやめるよう指示を画面に表示する。 受注製品と調合データを連動させると、製品名を探せば使用する塗料も表示される。塗料缶に貼った二次元コードを読み取って正誤を判断して次工程に移るため、塗料の種類の間違いを防げる。全ての材料を調合する前に調合用容器を持ち上げれば警告を出すため、硬化剤の入れ忘れも防げる。 窪井社長は中小の塗装企業にこそ、このIoTシステムの導入を勧める。「例えば、わが社では夏と冬で20度以上の温度変化がある。その中で均一な塗装品質を保つには、調合の微調整が重要。KCW-CMSには各社の調整のノウハウを詰め込める」。 恒温のための空調を使わずに塗料の使用量を最適化できれば、会社の収益性だけでなく、地球環境への負荷も低減できる。KCW-CMSを通じて久保井塗装が実践する塗着のノウハウを学び、約6割の塗料を削減し、不良率も数%にまで抑え込んだ工場もある。
水平展開も簡単
元々は、塗料の使用量の最適化や生産と在庫管理の手間を減らすために、KCW-CMSを開発。それとロボットシステムを組み合わせて、動作や塗料の調合にも技術者のノウハウを詰め込んだロボットシステムを構築できた。 スマート・スプレー・ロボット・セルには、塗装の自動化に必要な機器が集約されている。そのため、ソフト面さえ整えば、同製品を新たに導入するだけで水平展開が簡単にできる。20年には1台増設し、1人のオペレーターで2台の段取り作業などをこなす。 「ロットの数量が多い被塗物はロボットに作業させて、技術者は試作や小ロット、複雑形状や特殊な塗料のものに対応する体制を取れる。『研究開発型』を掲げるわが社にとっては、開発案件に技術者が余裕を持って取り組める意義は非常に大きい。機能性塗装の可能性に、まだまだ挑戦していきたい」と、窪井社長は意気込む。
(ロボットダイジェスト編集部 西塚将喜)
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