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2025.06.19
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[SIerを訪ねてvol.56] “ワンチーム”で金属加工業の自動化を!/石川工機

石川工機(名古屋市天白区、石川利行社長)は直交ロボットを使った接着剤塗布機などの自動化システムを手掛けるシステムインテグレーター(SIer、エスアイアー)。同社は複数のSIerや金属加工会社と協業し、台湾のテックマンロボットの協働ロボットを使った金属加工業向けのロボットシステムの開発に取り組む。石川社長は「各社がメカ設計やティーチングといった得意分野を生かして『ワンチーム』で改良を重ねることで、実用性の高いシステムを開発できる」と語る。

部品の多くを内製できる

 石川工機は直交ロボットを使った接着剤塗布機や垂直多関節ロボットによるスポット溶接などの自動化システムを手掛けるSIerで、メカ設計や機械組み立てを得意とする。もともとは金属加工事業から始まった会社で、自動化システムに必要な部品の多くを内製できるのが強みだ。

 石川社長は「マシニングセンタや数値制御(NC)フライス盤など、工場内にある約30台の工作機械を生かし、さまざまな部品を内製できる」と話す。

協働ロボットシステムを開発

手押し 台車式の協働ロボットシステム

 同社は2023年4月にテックマンロボットの1次代理店である山善と2次代理店契約を締結し、テックマンロボットの協働ロボットを使った金属加工業向けのシステム開発に乗り出した。同年8月にはSIerのTECHNO REACH(テクノリーチ、愛知県長久手市、加藤正己社長)や自動車部品の単発プレス加工を手掛ける大伸(愛知県刈谷市、伊藤大蔵社長)と共同で、単発プレス加工を自動化する協働ロボットシステムを構築。石川工機がメカ設計を、自社で対応が難しかったティーチング(教示)やプログラミングなどをテクノリーチと大伸が担い、板材の供給からプレス部品の取り出しまでの一連の作業を自動化した。

  さらに、ロボット向け減速機部品などを製造するSIerの田口鉄工所(岐阜県大垣市、田口薫社長)とも連携し、移設が容易な手押し台車式の協働ロボットシステムを開発。移動先に設置されたランドマーク(認識用マーク)を協働ロボットに標準搭載されたビジョンセンサーが読み取ることで、簡単に位置補正ができるため、補正作業なしで即座に作業を開始できるのが特徴だ。石川工機と田口鉄工所が共同で同システムの販売を担い、メンテナンスや保守は主にテクノリーチが対応する。

「ワンチームで改良を重ねる」と語る石川利行社長

 石川工機は協働ロボットシステムの開発に当たり、もともとティーチングやプログラミングの経験やノウハウが少なかった。ティーチングやプログラミングに強みを持つテクノリーチとは以前から接点があり、石川工機は自社が苦手とする分野をカバーするために協業した。また、実際の製造現場のニーズを取り入れる狙いで、協働ロボットシステムのユーザーでもある大伸や田口鉄工所との協業にも踏み切ったという。

 石川社長は「それぞれがメカ設計やティーチングといった得意分野を生かして『ワンチーム』で改良を重ねる。これで互いの弱点を補い合いながら、実用性の高いシステムを製作できる」と語る。

大きな衝撃を受けた

無料体験セミナーでは石川社長自らが顧客にティーチングなどを指導する

 そもそも、石川工機が協働ロボットシステムの開発を始めたきっかけは、21年に自動化設備を扱う山善のトータル・ファクトリー・ソリューション(TFS)支社で、テックマンロボットの協働ロボットによるピック&プレースのデモを目にしたことだった。石川社長は「協働ロボットがランドマークとビジョンセンサーを使って簡単に位置補正する様子に大きな衝撃を受けた。これならシンプルで扱いやすく、人手不足や後継者不足に悩む中小・零細規模の金属加工会社も導入しやすいのではないかと考えた」と当時を振り返る。

 

 石川工機は現在、協働ロボットシステムの提案を加速させる目的で、テックマンロボットの協働ロボットなどを紹介するパンフレットの作成や自社ホームページの改修を進める。また、テックマンロボットの協働ロボットの無料体験セミナーも定期的に開催する。これまでテクノリーチや大伸の支援を受けていたティーチングやプログラミングも、簡単な指導なら自社でできるレベルにまでノウハウを蓄積したという。石川社長は「今後もさまざまなSIerとの連携を視野に、中小・零細規模の金属加工会社に向けて協働ロボットシステムを提案していく」と意気込む。

(ロボットダイジェスト編集部 山中寛貴)

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