生産現場のロボット化と自動化を支援するウェブマガジン

2023.07.03

連載

[SIerを訪ねてvol.36]協働ロボットを使い倒せ! ユーザーと共に作るシステム/日晃オートメ

ロボットシステムの構築を担うシステムインテグレーター(SIer、エスアイアー)を紹介する連載企画「SIerを訪ねて」。今回は自動車業界向けの自動機や専用装置の設計、製作などを得意とする日晃オートメ(岐阜県各務原市、沖原由洋社長)を取材した。協働ロボットシステムの提案に注力しており、昨年には協働ロボットを“使い倒す”ことをコンセプトに据えた「スマートセットアップロボット」を発表。協働ロボットの汎用性や拡張性の高さを生かしてさまざまな場所に適用することで、投資対効果の高いシステムをエンドユーザーと共に構築したい考えだ。

電気からメカまで

 日晃オートメが本社を置く岐阜県各務原市は製造品出荷額が県内トップで、航空機や自動車、化学工業などさまざまな産業が集積する。
 東海北陸自動車道の岐阜各務原インターチェンジを下りて東に10分ほど車で進んだ先に、同社の本社がある。各務原市役所がある市の中心部からもほど近く、本社のすぐ裏手には航空自衛隊の岐阜基地もある。

 同社は自動車業界向けの自動機や専用装置の設計、製作などを得意とするセットメーカーだ。会社設立は1970年で、現在は75人の従業員が勤務する。電気制御システムが祖業だったこともあり、制御装置の設計や電気配線の作業を担う電気関係のメンバーが17人と手厚いのが特徴。機械設計や組み立てを手掛けるメンバーは計16人で、メカ関係よりも電気関係の従業員の方が多い。
 沖原社長は「自動車業界のニーズの変化に合わせ、電気からメカまで事業領域が広がった」と振り返る。

実習装置で従業員育成

日晃オートメの会社紹介(提供)

 自動車部品の組み立てや検査を自動化する各種専用装置が同社の主力で、中でも検査関連の専用装置やロボットシステムのウエートが大きい。「検査工程の自動化は難しく、付加価値が高い。こうした工程に積極的にチャレンジすることで技術力を高めてきた」と沖原社長は述べる。
 最近はモーター部品に使われるコイルの溶接装置など、電動車関連の案件も増加傾向にあるという。

 自動機や専用装置にロボットを組み込んで出荷するパターンも多く、ロボットの取り扱い実績も豊富だ。日本ロボットシステムインテグレータ協会(SIer協会)や中部地域SIer連携会にも加盟し、ロボットSIerとしての存在感も高めている。

従業員教育のために開発した実習装置(提供)

 近年は協働ロボットシステムの製作に注力しており、デンマークのユニバーサルロボット(UR)の協働ロボットを使って部品の除電(静電気を取り除くこと)作業や除塵(じょじん)作業を自動化するシステムや、容器の箱詰め作業を自動化するシステムなどをこれまでに手掛けてきた。また、10台以上のURの協働ロボットを連携させた大規模なシステムを改変構築した実績もある。

 同社はロボットの需要が今後も増加すると見越し、ロボットを扱える従業員の育成強化にも取り組む。その一環で、デンソーウェーブ(愛知県阿久比町、相良隆義社長)の垂直多関節ロボットやビジョンセンサーなどで構成された実習装置を2017年に開発。ロボットの基本的な操作方法や周辺機器の取り扱い方法を学習できる体制を整え、社内の技術力の底上げに努めている。
 沖原社長は「お客さまのさまざまな用途に対応できるよう、社員教育のために装置を整備したが、社外にも需要があるなら将来的には外販も検討したい」と語る。

TOP