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2021.04.19

連載

[注目製品PickUp!vol.34]配線をすっきりと収納し断線防ぐ/松田電機工業所「スマートアレンジシステム」

自動車用の各種スイッチ部品を製造、販売する松田電機工業所(愛知県小牧市、松田佳久社長)は2020年10月、協働ロボット用の配線収納装置「スマートアレンジシステム」を発売した。電源ケーブルやエアホースなどのたるみをすっきりと収納でき、作業者や周辺の設備との接触を防いで断線リスクを低減する。デンマークのユニバーサルロボット(UR)の協働ロボットに特化しており、21年度に1000台の販売を目指す。

余長が断線リスクに

 ロボットには電源ケーブルやロボットハンド用のエアホースなど、さまざまな配線が必要だ。こうした配線の取り回しでは通常、断線のリスクを避けるため、長さに多少のゆとりを持たせるケースが多い。この長さのゆとりを「余長」と呼ぶ。

 だが、裏を返せば、余長分だけ配線がたるむ。特に協働ロボットは安全柵が要らず、作業者と同じ空間で稼働できるだけに、たるんだ配線が作業者や周辺の設備と接触して引っ掛かり、結果的に断線するリスクもある。

 松田電機工業所が2020年10月1日に発売した「スマートアレンジシステム」は、配線の余長を収納する装置だ。作業者などとの接触を防いで断線リスクを低減できる上、ロボット周辺の作業スペースの安全性も確保できる。

慣れた人なら1時間半で

スマートアレンジシステムの概要(提供)

 スマートアレンジシステムは、ロボットハンドをはじめとしたエンドエフェクターに搭載するコイルと、ロボットアームに取り付ける2つのコイル、配線を保護する「スリットチューブ」などで構成される。
 水道ホースを巻き取るリールのようなイメージで、計3つのコイルがスリットチューブをすっきりと収納する。3つのコイルが協働ロボットの動きに合わせてスリットチューブを巻いたり、戻したりすることで、配線の余長を管理する仕組みだ。
 「スマートアレンジシステムはケーブル保護管とは違い、配線を保護するだけではなく余長も管理できるため、配線の長さを気にする必要がない」と顧客開拓営業部の鈴木朝士次長は説明する。

スマートアレンジシステムが搭載された協働ロボット(提供)

 また、スリットチューブはケーブルやエアホースなどを結束して一本化するのに使う。スリットチューブは最大で直径(φ)16mmまで対応でき、φ16mm以内であれば何本でも配線を入れられる。
 専用のバンドやネジで簡単に取り付けられるのも大きな特徴だ。鈴木次長は「協働ロボットの扱いに慣れた人なら約1時間半で装着できる。初心者でも2時間~2時間半あれば取り付けられるだろう」と話す。

 スマートアレンジシステムの開発には、同社が製造する「ステアリングスイッチ」と呼ばれる部品の技術を生かした。
 ステアリングスイッチとは自動車のハンドルに搭載されるスイッチ。ハンドルに合わせて回転するため、断線を防ぐためにも内部の配線に余長を設ける必要があった。そこで培った配線収納の構造や技術を協働ロボットの分野に応用した。

21年度で1000台

「ゆくゆくは産業用ロボット用の製品なども開発したい」と話す鈴木朝士次長

 スマートアレンジシステムはURに特化しており、最大可搬質量が5kg、10kg、16kgの協働ロボットに対応する。UR独自の周辺機器認証制度「UR+」も申請中で、近いうちに取得できる見込みだという。
 価格は20万円を予定し、21年度で1000台の販売を目指す。

 また、今後はURだけではなく、他社の協働ロボットや一般的な産業用ロボット用にもスマートアレンジシステムのラインアップを広げる考えだ。
 「一般的な産業用ロボットは協働ロボットよりも市場規模が圧倒的に大きいので、ゆくゆくは一般的な産業用ロボット用の製品なども開発したい」と鈴木次長は話す。

(ロボットダイジェスト編集部 桑崎厚史)

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