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2020.07.20

【特集】[集結! 自動化の最新提案vol.10]中小も生産技術力を/TSF自動化研究所 村山省己代表

産業用ロボットなどを使った自動化のニーズは、これまでも中長期的に拡大すると言われてきた。今回の新型コロナウイルス感染症の影響で、その傾向はさらに強まった。しかし「自動化が普及するには、まだまだ解決すべき課題がある」と東海大学工学部の元教授でTSF自動化研究所(東京都町田市)代表の村山省己さんは言う。その課題とは、解決策はあるのか。半月以上にわたり掲載してきた特集企画「集結! 自動化の最新提案」の締めくくりとして、ウェブインタビューで村山さんに聞いた。

生産の国内回帰も

 今回のコロナ禍を機に、自動化が広がるのは間違いないでしょう。
 新型コロナウイルスが発生した中国湖北省武漢市の周辺には多くの自動車部品工場があります。その部品の供給が途絶えたことで多くの自動車メーカーの生産に影響が出ました。生産拠点や調達先の国内回帰、中国以外の国への分散など、サプライチェーンの見直しが検討されています。経済産業省も多額の予算を確保し、こうした動きを後押しします。調達先を国内に戻し、人件費の高い国内で生産するなら、生産性を高める自動化は必須です。

 コロナ禍以前の自動化の状況を見ると、自動車のメーカーやティア1企業、大手電機メーカーなどではある程度自動化が進んでいました。しかし食品や化粧品、医薬品といったいわゆる「三品産業」など、他の産業では自動化が進んでいない。また中小企業も自動化されておらず、町工場などの多くは「数値制御(NC)化」の段階で止まっているのが現状です。これら企業も、今後は自動化を推進する必要があるでしょう。

まずは工程の見直し

「中小企業の自動化には課題もある」と村山省己代表

 中小企業にまで自動化や産業用ロボットを普及させるには、まだまだ壁があります。
 ロボットを導入する時に、人の作業をそのまま置き換えるだけではうまくいかないケースは多い。事前に工程を見直し、作業をスリム化したうえでロボットを導入しなければ高い効果は得られません。
 一つ一つの作業をなくせないか、もっと簡単にできないかを検討する。作業手順や段取り、各設備、レイアウトなども見直す。ロボット以外の方法で自動化できることも多いので、最適な自動化手段の検討も必要です。

 中小企業の自動化投資は予算に限りがあるので、自社の作業工程の見直しからシステムインテグレーター(SIer、エスアイアー)に任せるのは難しい。
 ロボット導入前に製造工程や作業を見直すコンサルティングを支援する自治体もあり、私も東京都中小企業振興公社ロボット導入・活用支援事業の相談員として導入前のコンサルティングを担当しています。しかしいくら頑張っても、年間10~20件が限界です。東京都に町工場が1万5000社あるとして、こうした支援制度を通して自動化できるのはほんの一部です。

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