[特集SIerになろうvol.9]SIer機能を獲得する商社【その1】/ユアサ商事
工場の自動化(ファクトリーオートメーション=FA)機器に強い商社が、調達力やスケールメリット、物流網などの強みを生かし、システムインテグレーター(SIer、エスアイアー)業界に参入するケースが増えた。参入のアプローチはさまざまで、「特集SIerになろうvol.9」として今回取り上げるユアサ商事はSIerの新会社を立ち上げ、vol.10の山善は社内に専門の部署を創設した。戦略に違いはあるが、設備メーカーや既存のSIer、顧客の間に立ち、できることを少しずつ拡大しようと注力する点は同じ。人材不足という共通の課題も抱えるが、すぐそこにある需要を獲得するための投資を継続する。
ロボット事業は成長分野
ユアサ商事は2016年6月に新会社、ロボットエンジニアリング(前橋市、佐古晴彦社長)を立ち上げてSIer事業に参入した。20年3月期を最終年度とする中期経営計画では産業用ロボットを成長分野に位置付け、新会社はエンジニアリングの中核を担う。
SIer事業参入の背景には、中小企業の自動化ニーズの拡大がある。新会社の社長を務めるユアサ商事の佐古晴彦執行役員機械エンジニアリング本部長は「製造業では15年ごろから工作機械単体ではなく、産業用ロボットや周辺機器を含めたシステム一括での依頼が急激に増えた。依頼全体のうち中小企業が占める割合も上がり始めた」と振り返る。
事業効率向上のため
製造業の大手企業はライン設計を担当するエンジニア部門が社内にあり、産業用ロボットの導入時でもシステム構築やアフターフォローを自力でもできる。だが、中小企業の多くは社内にエンジニア部門を持たない。中小企業への自動化のニーズの広がりで、設備機器を供給する商社が、SIerを仲介してロボットシステムの構築を支援するケースが増えた。
ユアサ商事には関東圏だけでも10社以上のSIerの協力企業がいるが、受注が協力企業の能力を超え、納期が長期化していた。また、システム構築が複雑な案件ではユアサ商事と協力企業間のやり取りも煩雑になり、効率を上げにくい。
そこでユアサ商事のグループ内でシステムインテグレーションを担う会社を設立した。佐古執行役員は「システム構築が複雑な案件や新規商材を扱う場合は新会社が対応し、それ以外は協力会社へ依頼する形」を理想に掲げる。
だが、現状はまだ理想形には届かない。事業に取り掛かると、エンジニアの人手不足を痛感した。昨年12月時点の従業員は6人。佐古執行役員は「自動化は手作り。工場に合わせた一品一様のシステム構築には人手が要る」と話す。