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2019.01.10

インタビュー

“身の丈の自動化”が普及の鍵/自動化推進協会松元明弘会長

次世代の自動化とはどういったものか――。より多くのセンサーを搭載し、最新のデジタル技術で完全自動化を実現するシステムだろうか。「そうではない」と自動化推進協会の松元明弘会長(東洋大学教授)は言う。自動化のすそ野が広がる中で「シンプルなからくり仕掛けや昔からあるメカ機構とデジタル技術を適材適所で組み合わせた、中小企業でも導入できる“身の丈の自動化”が求められている」と語る。

自動化を取り巻く環境が変化

FA・ロボットシステムインテグレータ協会の設立総会の様子(同協会提供)

――以前と現在で、自動化を取り巻く環境に変化はありますか?
 自動化はいつの時代も製造業の重要な課題ですが、ここ数年でその目的が変わりました。「コストをいかに下げるか」だけでなく、「人手不足への対策」として、これまで自動化が進んでいなかった分野にもすそ野が広がっています。また、自動化システムを提供する側の業界も変化しています。これからの自動化で大きな役割を果たすのが、ロボットなどを組み込んで自動化システムを構築するシステムインテグレーター(SIer、エスアイアー)でしょう。2018年にSIerの団体としてFA・ロボットシステムインテグレータ協会(会長・久保田和雄三明機工社長)が発足しました。業界を挙げてSIerの技術力強化・人材育成・広報活動および経営基盤強化や事業環境の改善に取り組んでいます。SIer業界が活性化すれば、必然的に自動化システムの普及は加速します。

メカ機構やからくりをうまく使う

――普及拡大のボトルネックになりそうな要因はありますか?
 中小企業では、コストが導入の障害になることがあります。中小企業の方が人手不足は切実ですが、自動化したいと思ってもコストが高いとなかなか導入できない。コストを抑えるために有効なのが、メカニカルな機構をうまく使うこと。例えば複数のユニットを連動させて、タイミングを合わせて動作をさせたい場合、必ずしも各ユニットに駆動装置や制御装置を取り付ける必要はありません。リンクなどの機構を使えば簡単かつ確実に複数のユニットを同期させられ、コストも抑えられます。

――メカ機構の知識が重要になりますね。
 その通り。制御装置や駆動装置の一部を省略するだけでなく、そもそもそれらを必要としない「からくり改善」と呼ばれる手法もあります。重力などを利用してワークの位置決めや整列をさせるもので、アイデアさえあれば制御装置も駆動装置も要りません。こうした手法は自動車業界で以前から使われてきました。現場の改善活動の一環で手軽な自動化の仕組みを作るのは「ロー・コスト・オートメーション(LCA)」と呼ばれ、デンソーなどが古くから取り組んでいます。からくりも含めたメカ機構をうまく自動化システムに盛り込めば、費用対効果の高い自動化システムが作れます。

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